研究課題/領域番号 |
24360116
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
中島 健介 山形大学, 理工学研究科, 教授 (70198084)
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研究分担者 |
斗内 政吉 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (40207593)
山田 博信 山形大学, 理工学研究科, 助教 (50400411)
齊藤 敦 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (70313567)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / ジョセフソン接合 / 高温超伝導体 |
研究実績の概要 |
これまでに固有ジョセフソン接合の非線形光応答によるテラヘルツ波放射を目指す過程で,世界で初めてBi-2212高温超伝導体薄膜から製造した固有ジョセフソン接合からのテラヘルツ波放射に成功した。これまでに報告のあるバルク単結晶製の固有ジョセフソン接合と比較して,テラヘルツ波の最大放射強度には全く遜色がないだけでなく,最大放射強度の観測された温度範囲は60K~75K,放射が観測された最高温度は液体窒素温度(77K)を越える80Kに到達した。これらはBi2212薄膜の高品質性と薄膜型固有ジョセフソン接合の良好な放熱性に由来しており,本課題で実施している大強度パルス光照射による熱衝撃耐性を実証する結果と言える。平成26年度は,テラヘルツ波の放射メカニズムを探ることに注力し,20K~85Kの広い温度範囲にわたってテラヘルツ波放射周波数/強度,放射時の固有ジョセフソン接合の動作条件を包括的に調査した。 その結果,(1)放射周波数は,0.3~1.4THzの非常に広い範囲に及び接合の共鳴モードと密接な関係にあり,(2)接合の半波長共鳴に相当する基本モードを励起したときに最大放射強度の得られることを見出した。また,従来の接合では精密な接合電圧測定の妨げとなっていた電極と接合間の接触抵抗を無視できる4端子測定を実現したことによって,(3)放射が起こっている状態では,固有ジョセフソン接合内の全接合が放射周波数に相当する電圧状態になっていることを初めて実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固有ジョセフソン接合の非線形光応答による大強度テラヘルツパルス波放射の実現を目指す過程で,放射デバイスとして採用した薄膜段差型デバイスの特徴である良好な放熱性,精密なバイアス電圧制御性が想定以上の効果をもたらした。その結果,臨界電流以上の電流を注入して一定の電圧に精密に電圧バイアスすることが可能となり液体窒素以上の動作温度で連続テラヘルツ波の発生に成功し,さらに放射メカニズムの解明に向けて接合動作の詳細な解析が進んでおり,これらを加味してテラヘルツの連続波/パルス波発生デバイス実現に向けた知見が順調に得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
世界初となる薄膜段差型固有ジョセフソン接合からの連続テラヘルツ波の発生によって独自の方法で製作しているBi2212高温超伝導体薄膜の高品質性は立証された。デバイスの良好な放熱性をより積極的に活用する意味からさらなる放熱性の向上が期待される基板埋め込み型固有ジョセフソン接合の開発にも成功しており,今後はこの新型接合を用いることで高強度光パルス耐性をさらに向上させ,非線形光応答による高強度テラヘルツパルス波の放射実証を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に沿って固有ジョセフソン接合の非線形光応答によるテラヘルツパルス波放射の検証と並行して実施していた臨界電流超電流注入/電圧バイアスによってテラヘルツ・ジョセフソンプラズマ共鳴とそれに伴う想定以上のテラヘルツ連続波放射を観測した。これにより当初の予期を越える新たな知見が得られ,これを活用してより高強度のテラヘルツ連続波放射を実現する目途が立ち,新たな知見を加えた検証を行うための研究計画の変更が必要になった。
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次年度使用額の使用計画 |
電流注入と同時に光照射を行うことのできる良好な放熱性と光照射耐性を持つ固有ジョセフソン接合を新たに設計製作するための材料(フォトマスク,薬品,高純度ガス等)の費用と,電流注入状態での非線形光応答を検証するためのレーザー照射実験を行う大阪大学への旅費に使用する。
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