研究課題/領域番号 |
24360118
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
間中 孝彰 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (20323800)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機デバイス / 分光測定 / 光第2次高調波発生 / 電界分布 / キャリア輸送 / 電荷変調分光 |
研究概要 |
近年、活況を呈している有機デバイス分野において、デバイス動作時の状態を的確に捉える評価法の開発が早急に望まれている。本研究は、分子と電界・電荷との相互作用を評価する各種分光学的手法を用いて、基本的なデバイスパラメータ(キャリヤ密度、移動度など)を可視化した上で、系統的にデバイス動作を評価する「有機デバイス分光法」の確立を目的としている。本年度は昨年度に引き続き、時間分解SHG法を用いた単層の両極性トランジスタにおける電子・ホールの注入・輸送・再結合過程の観測や、顕微CMS法による両極性動作におけるキャリアの輸送過程評価を継続して行うとともに、新たに配向した有機半導体薄膜における異方的なキャリア輸送の評価を試みた。特に、有機トランジスタでは依然として高移動度材料に関する研究が活発であり、例えば単結晶などの利用もしばしば検討される。このような材料では、キャリア輸送が異方的になるため、その異方性の評価が重要である。今回のような評価を目的として、トップ電極に円形電極を用い、配向した高分子半導体薄膜や単結晶薄膜におけるキャリア輸送の異方性を直接可視化することに成功した。また、プレフィリング法による有機FETチャネルのトラップ評価を試み、絶縁膜の違いによりプレフィリングに必要となる電圧が変化することが明らかとなった。これにより、絶縁膜の違いによるトラップ密度の違いや、またエネルギー的な深さに関する情報を得ることができた。一方で、有機ELにおいて膜厚方向の電界分布を評価するシステムを新たに導入し、微小な測定スポットをスキャンさせることで劣化状態などの面内分布を評価することができた。また、有機太陽電池による研究では、時間分解SHG測定により、バルクヘテロ太陽電池におけるn型およびp型層内部の電界の選択的な評価に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
測定用のレーザーを、従来のナノ秒レーザーとフェムト秒レーザーを併用したことで、測定のSN比が格段に向上に、これまで観測が困難であった現象を評価できるようになった。特に、高速アンプと組み合わせることで、時間分解能が向上し、結果として単結晶におけるキャリア輸送の評価が可能となった。現時点での、時間分解能は5 ns程度であり、高い移動度の材料にも対応可能である。また、単結晶を用いることで、例えばバンド計算などとの詳細な比較も可能となり、温度依存性などと組み合わせることで、キャリア輸送のメカニズムといった議論もできつつある。
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今後の研究の推進方策 |
順調に計画が進んでいるため、新しい現象や、手法を常に取り入れながら今後の研究を進めていく予定である。特に、エネルギー的な側面からの評価として、これまで線形な光学プロセスであるCMSのみを用いていたが、今後非線形スペクトルなどに展開する予定である。これは、両方の光学スペクトルを組み合わせることで、相補的な情報を得られるだけでなく、時間分解評価も可能となる。また、単結晶におけるキャリア輸送の理論的予測を進め、実験との比較を行う予定でいる。一方、時間分解能が向上したことにより、今後無機材料に対する応用も視野に入れて進めていく予定である。
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