研究課題/領域番号 |
24360121
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
喜多 隆 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10221186)
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研究分担者 |
原田 幸弘 神戸大学, 工学研究科, 助教 (10554355)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 量子ドット / 光アンプ / 偏波無依存 / Siドーピング |
研究概要 |
半導体光アンプ(SOA)は小型であるだけでなく、100Gb/s以上で動作する高速光パルスの3R光再生中継デバイスや超高速スイッチングデバイスとして期待されている。量子ドットを利用すれば、積層成長によるドット高さの制御が可能であり、TM利得増強によって偏波無依存光アンプが実現できる。また、ドットサイズの不均一により、クロストークの無い広帯域動作も可能である。本研究では、InAs量子ドットにSiをドーピングして無輻射再結合損失を大幅に抑制した独自の高光利得量子ドットを利用し、積層量子ドットを作製する。これによって、1dB以下の偏波無依存動作を実現するとともに、量子ドットの高利得化によって広帯域動作を可能にし、超高速光スイッチおよび波長変換機能を有する高機能な光アンプの実現を目的にしている。平成24年度は以下の研究を実施した。 (1)歪制御量子ドット積層技術の確立とSiダイレクトドープ技術の確立 本研究では分子線エピタキシーによってGaAs(001)基板にInAs積層量子ドット構造を作製した。GaAs中間層厚とIn供給量の精密な制御によって積層量子ドット構造を作製し、上下の量子ドットに局在する波動関数を結合させてTM利得を増強させることに成功した。また、量子ドットの自己形成過程を精密に解析し、In原子が凝集するタイミングでSiを供給することで量子ドットに選択的にSiをドーピングが可能であることを明らかにした。 (2)基礎光学特性評価 本研究では(1)で作製した一連の積層量子ドットに対し詳細な基礎光学特性評価を実施した。その結果、フォトルミネッセンスの温度依存性、励起光強度依存性より積層量子ドットの発光特性を明らかにするとともに、量子ドット成長条件と発光活性化エネルギーとの関係を詳細に調べて、光学特性に直接影響する結晶欠陥の発生を最小限に抑えることができた。また、光利得特性に関する知見を得るため、Hakki-Paoli法による利得スペクトル評価技術を立ち上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Siドーピングによる電子捕獲中心の補償効果を確認することに成功して当初の目的を達成しただけでなく、過剰なドーピングによる量子ドットへのキャリア緩和過程の制御に関する知見も得ることができた。さらには、Hakki-Paoli法による利得スペクトル計測技術を当初予定より早く立ち上げることができ、平成25年度以降のデバイス特性評価によりスムースに移行できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果をもとにして、以下のように、積層量子ドットにおける量子ドットの解析とSiドープ量子ドットの利得特性を精密に評価する。 (1)積層量子ドットの歪分布を考慮し、価電子構造の理論計算を実施し、価電子バンドのミキシングに由来する光学遷移選択則と遷移強度について以下の影響を明らかにする。 →中間層厚による波動関数のトンネル結合状態 →積層構造による偏波変化特性 →GaAsN歪補償層による歪制御性 (2)Siドープ量子ドットの高利得特性の精密評価 量子ドットに選択的に不純物をドープする技術を利用して無輻射再結合を抑制する。量子ドットの光利得ダイナミックスを計測する。これら結果をSiドープしていない量子ドットのデータと詳細に比較するとともに、Siドープ濃度と利得増大の関係を明らかにする。 (3)積層量子ドットSOAの試作 積層量子ドット活性層を含むp-i-n構造を設計し、AlGaAsクラッド層で挟み込んだSOA素子を設計する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度未使用金額直接経費576,163円を平成25年度予算と合わせて使用することによって、利得スペクトルをより精密に計測するためのスペクトラムアナライザーを購入する。これによって上記(2)を一層精密なものにし、(3)のSOAデバイスへの特性データのフィードバックの精度を上げることができる。
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