研究課題/領域番号 |
24360122
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木須 隆暢 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (00221911)
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研究分担者 |
井上 昌睦 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (80346824)
東川 甲平 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (40599651)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高温超伝導線材 / 臨界電流 / 均一性 / 欠陥検出 / マルチスケール / 磁気顕微鏡 / ホール素子 / 非破壊・非接触 |
研究概要 |
昨年度の成果を更に発展させ、商用生産されている200m長希土類系高温超伝導線材の評価に成功すると共に、従来の評価手法で検出できていなかった電流制限因子の解明や電流輸送特性の物理モデルの確立など、順調に進展している。本年度の主な成果は次の通りである。 (1) 200 m長商用希土類系高温超伝導線材の臨界電流密度(Jc)分布の評価:走査型ホール素子顕微鏡による長尺テープ線材の評価手法を適用し、昨年度よりも更に長尺な線材への適用可能性について検証した。すなわち、200 m長の実用線材において二次元的なJc分布を評価可能である事を実証すると共に、通常行われる一次元的な空間情報のみからは把握困難であったテープ面片面において周期的に点在する低Jc部位を検出し、臨界電流の長手方向のバラツキの原因を解明するなど、作製プロセスに対する有効な知見を得た。 (2) 統計的Jc分布に基づく電流輸送特性の物理モデルの確立と磁場下の電流輸送特性の定式化:長尺線の評価より得られる統計的Jc分布を基に、線材の電流輸送特性を記述するための物理モデルを確立し、任意の温度、磁場環境下における線材の電流輸送特性を高精度に記述し、予測する事も可能であることを実験との比較によって実証した。本手法は、希土類系高温超伝導線材の磁場中特性向上に伴う技術コストの低減効果を表す指針として有効であるばかりでなく、冷熱発生、動作磁場、運転電流など総合的に考慮した機器の設計においても極めて有用である。 (3) 有効線幅を指標とした希土類系高温超伝導線材の長尺線加工技術の評価:昨年度確立した有効線幅評価によって最適加工法を検討し,さらに長尺線加工への適用可能性について検討した。加工法の異なる線幅2 mmの4種類の細線加工線材に対し、連続に接続した40 m長の試料を用いて一括に高速評価する手法を提案すると共に、長尺線加工技術の評価手法としての実用性を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実用レベルの商用長尺線材の評価に既に成功し、これまで未知であった電流制限因子を本手法の特徴である二次元的計測によって初めて明らかとした。また、長尺線材の評価結果によって得られる統計事象を基に、磁場下の電流輸送特性を記述する物理モデルを確立し、各種プロセスによる線材の特性との比較によってその有効性を明らかとした。以上により、当初の研究目的をほぼ達成する成果を既に得ている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き数100 m級の長尺線材を対象とし、人工ピン導入プロセスなど各種プロセス条件との関係を明確化し特性向上を図る。同時に、本手法の長尺線材の臨界電流評価手法としての信頼性を検証する。さらに、磁場下の電流輸送特性と局所不均一性の相関関係を明確にし、本研究で提案する均一性の評価手法は、マグネット応用などで重要となる低温磁場環境下を含むより広範囲な実用領域における線材の性能評価手法としても有効である事を明らかとする。 予算計画は、試験に用いる長尺線材の購入経費、および実験のための冷媒の経費など消耗品費を中心に立案する。以上により、実測データをさらに充実させ、線材性能向上のための作製プロセスに有効にフィードバックすると共に、長尺線材の評価手法として本手法の信頼性と有効性を明らかとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費として予定していた磁気顕微鏡のセンサとして用いるマイクロホール素子が予定よりも破損が少なかったために購入数が少なくて済んだ事に加え、昨年度初頭に液体ヘリウムの供給が全国的にやや困難な時期があり、液体ヘリウムの消費量を節約した。以上により、消耗品費の減額に伴い次年度使用額が30万円ほど生じた。 翌年度分の経費と合わせて、実験のための消耗品費として使用する。
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