研究課題/領域番号 |
24360125
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
小椋 厚志 明治大学, 理工学部, 教授 (00386418)
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研究分担者 |
廣澤 一郎 (財)高光度光科学研究センター, 産業利用推進室, 室長 (00360834)
小瀬村 大亮 明治大学, 理工学部, 助教 (00608284)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | SiGe / 異方性歪 / 液浸ラマン分光法 / フォノン変形ポテンシャル |
研究概要 |
(001)Si基板上に約30nmエピタキシャル成長したSi_<1-x>Ge_x薄膜について、ラマン分光法による正確な歪測定のために歪換算係数(PDPs : phonon deformlation potentials)を求めた。本年度はGe濃度50%以下(15および30%)の低濃度Si_<1-x>Ge_xを対象とした。ラマンスペクトルは歪に加えてGe濃度に強く依存するので、予め正確なGe濃度を知ることが重要である。実験では、高精度X線回折(XRD : X-ray diffraction)測定、およびラザフォード後方散乱(RBS : Ruthedbrd back scattering)測定を行い、Ge濃度を精密に求めた。 RBSによる測定結果と、XRDで求めた格子定数からベガース則の二次項までを考慮して求めたGe濃度が良い一致を示した。 RBS,XRDで得られたGe濃度、XRDで得られた面内と垂直方向の格子定数、および液浸ラマン分光法により得られたSi_<1-x>Ge_xの縦光学(LO : longitudinal optical)フォノンモードと横光学(TO : transverse optical)フォノンモードを、フォノン動的方程式を解いて得られた永年方程式に代入することにより、Si_<1-x>Ge_xのPDPsを導出した。これまで、SiあるいはGe単体について複数の研究者からPDPsが報告されているが、SiGeのPDPs評価は少なく、特に薄膜Si_<1-x>Ge_xのPDPsの評価は皆無である。これは、(001)Si基板上Si_<1-x>Ge_xにおいて、PDPs導出に不可欠な複数フォノンを励起する技術がなかったことに因る。我々はこれを、高開口数(NA : numerical aperture)対物レンズで得られる試料表面に対して垂直な偏光成分を持つ励起光(z-polatization)を利用して解決した。本研究成果により、si_<1-x>Ge_xのPDPsの詳細な知見が初めて得られ、次世代チャネル材料候補のSi_<1-x>Ge_xの複雑な歪場測定が可能となった。 更に、硬X線光電子分光法によるGe濃度深さ分布測定のための試料ホルダーを製作した。 次年度は、Ge濃度50%以上の高Ge濃度Si_<1-x>Ge_x薄膜をGe基板上にエピタキシャル成長した試料を用いて同様の実験を行い、PDPsを導出する予定である。さらに、Si_<1-x>Ge_x薄膜をメサ構造に加工した試料を準備して、異方性歪緩和の測定を行なう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Ge濃度が比較的低い(15,30%)Sl_<1-x>Ge_xを用いてPDPsを正確に導出した。これにより、申請書に記載した初年度の目的が達成された。これまでに報告例がないSl_<1-x>Ge_xのPDPsを導出し、PDPsに関する深い知見が得られ、トランジスタ特性を議論する上で極めて有用な情報を得る手段を確立した。さらに、来年度以降の計画にある、高Ge濃度Sl_<1-x>Ge_x試料、および異方性歪測定実証のためのメサ加工Sl_<1-x>Ge_xを作製し、今後の研究を円滑に進めていくための準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
Ge濃度50%以上の高Ge濃度Sl_<1-x>Ge_x試料作製を既に終え、今年度同様の手順でPDPsを導出する。今年度とのもっとも大きな違いは、解析スペクトルがSi-SiからGe-Geに変更になることである。GeとSiの大きな物性的差異として、光の吸収係数、フォノン閉じ込め効果などが挙げられ、測定、解析において変更点が生じる可能性があり、新たな知見に繋がると考えられる。来年度までの成果で、ほぼ全Ge濃度に対するSi_<1-x>Ge_xに対するPDPsが得られることになる。その後、得られたPDPsを用いて、メサ加工Sl_<1-x>Ge_x試料、実デバイス試料における異方性歪測定に移行する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験での利用優先度の高い消耗品につき、年度末もしくは次年度初めのどちらに納品されるかが微妙な納期の購入品があり発注したが、結果的に次年度初めの納品となった。納品次第すぐに使用し、次度予算での購入品と合わせて実験で使用する予定である。
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