研究課題/領域番号 |
24360126
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
粟野 博之 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40571675)
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研究分担者 |
バン ド 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40624804)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 磁性細線 / 全固体メモリ / エッチングレス細線 / スピントルク / 磁壁電流駆動 / ナノインプリント / 磁壁ピンニング / 光磁気記録 |
研究概要 |
昨年度立ち上げたエッチング処理なしで磁性細線を作成するためのナノインプリント装置と高保磁力磁性細線への磁区書き込みの行えるレーザー導入偏光顕微鏡を用いて計画に従って検討を行った。 1 溝幅は70nm~3000nmと10種類のパターンを有するNiスタンパを準備し、92ミクロン厚ポリカーボネイト基板に対してナノインプリント条件を明らかにし、UV光照射による表面平滑化条件も明らかにした。 2 磁性細線による長期データ保存可能な全固体メモリを得るためには、高保磁力の媒体が必要であり、誤動作に過電流に対するデータ保持の観点から、従来のTbFeCoアモルファス合金よりもキュリー温度が200度以上も高いTb/Co多層膜アモルファス磁性細線を作成した。この保磁力は5kOe以上と高いにも関わらず、磁壁駆動の臨界電流密度は1x10^7A/cm^2と低く抑えられることがわかった。また、Tb濃度調整による飽和磁化と臨界電流密度の関係性を調べたが、明確な関係を見いだすことは出来なかった。 3 ホール効果を用いて電流による磁壁駆動時の細線温度推定を行った。磁壁駆動時には温度はほぼ室温のままで温度上昇いない結果が得られた。より正確な温度推定を行う方法についても検討を進めた。最終年度にこれを実測する予定である。 4 磁性細線の記録再生基本特性を調べるためには、高速記録できる記録装置が必要であるため現行HDD磁気ヘッドによる高速記録を検討した。この導入により磁性細線に電流を印加しながら磁気ヘッドで記録することで磁性細線上に数多くの磁壁を導入することが出来る。再生にはTMRヘッドを利用することも検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は磁性細線に於ける電流磁壁駆動の詳細検討の計画に従って検討を進めた。 ①磁壁駆動臨界電流密度(Jc)の飽和磁化依存性を調べたが、Jcの更なる低減を実現することは出来なかった。これは、サブネットワーク磁化とJcの相関性の低さを示しており、Jc低減には別のメカニズムが存在していることを示唆している。 ②飽和磁化低減により保磁力が大きな磁性細線でも磁壁を低Jcで駆動できることを明らかにした。スピントルクが保磁力と無関係であることを示唆する結果となった。 ③ホール効果を用いて記録再生に重要な磁性細線の温度推定を行い、Jc印加時においても温度上昇はほとんどなく磁壁安定駆動時にも温度上昇はわずかであることを示した。 ④単一周波数で連続記録するための基礎検討を行った。これにより次年度記録再生基本評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、本年度開発進展し続けているプラスチック平滑化基板上にサブネットワーク磁化を有するアモルファス希土類・遷移金属磁性細線を形成し、本年度検討した磁性細線記録再生特性評価方法を用いて、単一周波数による記録再生特性評価を行う。更に、この単一信号特性を改善する方法を見い出す。これが出来た場合には、ランダムマーク記録による線形性評価を行う。線形性に問題が生じた場合には、細線作成プロセスや磁気特性を見直し、改善策を検討する。更に、ランダムデータ記録再生に成功した場合には、エラーレート測定を行う。この数値に問題があった場合には、記録に問題があるのか再生に問題があるのか明確にして改善策を見いだす。
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次年度の研究費の使用計画 |
記録再生検討用磁性細線試作が長引いて記録再生実験の検討に少し遅れたが出たため消耗品(Niスタンパ等)の購入が来季に伸びた。 遅れていた磁性細線の作成条件が分かったため、このための消耗品を来季すぐに発注して遅れを取り戻す。
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