研究実績の概要 |
本提案の根幹となるナノインプリントプラスチック基板上に形成したアモルファスTbFeCo磁性細線を作成し、これに電極を形成して該磁性細線上に磁壁を形成し、その磁壁を低電流で駆動することに成功した。従来のSi基板上のFeNi磁性細線における磁壁駆動の臨界電流密度は1.5x10e8A/cm2, Si基板上のCo/Ni磁性細線における臨界電流密度は2x10e7A/cm2だったのに対し、ナノインプリントTbFeCo磁性細線における臨界電流密度は1.5x10e5であった。これはFeNiに対し1000分の1、Co/Niに対し100分の1の大幅な改善である。通常のSi基板上に作成した磁性細線のエッジはかなり荒れているが、ナノインプリント磁性細線のエッジ荒れは極めて小さい。しかもナノインプリントを使うので細線形状はどれも同じ形状にできる。安価に容易に磁性細線を作成でき、しかも磁壁の電流駆動が容易になる優れた方法を発案、実証できた。この成果はハワイで開催された世界磁性物理学会MMM2014で報告(講演番号HT-14)した。また、この成果は投稿論文でも報告した(Hiroyuki Awano, JMMM Vo.383, pp50-55(2015))。更に、このナノインプリント磁性細線幅を45nmと従来の20分の1にまで細くすることに成功し、この極細磁性細線上にTMR磁気ヘッドを近接させ、磁区記録し、これをTMRヘッド再生することにも成功した。この記録再生装置の再生アンプ帯域は低いため、細線に電流を印加しながら記録再生するところまでできないが、今後高速応答可能なアンプを入手し、微小磁区高速記録再生の実現性を検証、改善する。更に、電流印加による温度分布の測定にも成功した。これら結果をベースとして本研究の目的である安価で、省電力、長期保存可能な大容量磁性細線メモリ実用に向けた研究開発を継続する。
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