研究課題/領域番号 |
24360127
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
杉村 明彦 大阪産業大学, デザイン工学部, 教授 (90145813)
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研究分担者 |
宇佐美 清章 大阪産業大学, デザイン工学部, 准教授 (40360507)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液晶 / 光電効果 / ダイレクタ制御 / 核磁気共鳴分光 / 連続体理論 |
研究概要 |
平成25年度は、「ダイレクタゆらぎの解明と制御」を目的に研究を進め、次の成果を得た。 1. 平成24年度に実施したローレンツモーターの設計・試作に続き、平成25年度は、その動作を確認すると共に、実際の核磁気共鳴分光装置内での回転制御に向けた設計を行った。ここでは、従来の光学スリットを用いた回転角検出方式から、測定精度の高いホール素子へ変更し、磁場に対して電場の印加方向が平行または直交系となるよう設計変更した。これにより、平成26年度の回転制御に向けた準備を完了した。 2. ネマチック液晶ダイレクタの回転緩和過程において観測される不均一配向分布は、熱的なダイレクタゆらぎに起因していると考えられる。これを検証するため、新たな揺らぎに基づく配向分布モデルを提案した。このモデルと従来の疑似延伸モデルにより、ダイレクタ初期配向分布と不均一配向分布の発生は、ダイレクタの揺らぎに起因することを明らかにした。さらに、このゆらぎの熱的な活性化エネルギーを実験的に確認し、時間分解核磁気共鳴分光法は、熱的なダイレクタゆらぎの振幅を評価する新たな手段として有効であることを示した。 3. 平成24年度に国際共同研究としてマラヤ大学化学科(Prof. R. Hashim)とマックスプランク研究所のDr. Zimmermannと共に、新規な液晶分子設計と合成、および、それらの重水素化を実施した。平成25年度は、合成した糖脂質系材料(deuterated octyl-D-β-glucoside)の相構造や、基本物性を電場重複印加重水素化核磁気共鳴分光法により調べた。同材料の電気・磁気異方性は、共に負であることを明らかにすると共に、強電場印加によりスメクチック相から疑似等方性相への可逆的な相転移現象を確認した。この相転移現象の詳細は、平成26年度の継続課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、当初の計画に沿って研究を進めた。1年間の研究達成度は、おおむね順調に進展している。 ローレンツモーターの設計・試作に関しては、回転角測定に用いた光学式スリット法による測定精度の向上が望めないことから、ホール素子を用いた測定法へと変更した。この結果、平成26年度への研究計画の組み込みの必要が生じた。一方、液晶ダイレクタの理論的研究では、ダイレクタゆらぎ効果に基づく不均一配向分布の解明に至ると共に、核磁気共鳴分光法によるゆらぎの測定を可能にした。以上の研究成果を総合して進捗状況を判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、強磁場中で試料の高精度回転制御を実現するための新規なローレンツモーターの設計・試作を進めた結果、回転角測定に用いた光学式スリット法による精度の向上が望めないことが判明した。このため、ホール素子を用いた回転角制御へ設計変更した。平成26年度にモーターの回転制御系を含めた完成を目指し、平成25年度の成果の一つである新規な糖脂質系材料の電場誘起相転移現象の解明に向けた研究を実施する。 (次年度の使用計画) 平成25年度は、光学式スリット法によるローレンツモーターの駆動試験を行い、回転制御精度に問題があることを明らかにした。このため、当該手法の作製のための当初予算の執行を控えた。同時に新たなホール素子使用を含めた回転制御系の設計と検討を行い、この制御系を含めた試作は平成26年度に実施することにした。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、強磁場中で試料の高精度回転制御を実現するための新規なローレンツモーターの設計・試作を進め、回転角測定に用いた光学式スリット法によるローレンツモーターの駆動試験を実施した。この結果、光学式スリット法による回転制御精度に問題があるだけでなく、モーター回転子の回転軸も偏芯しており、計画している精度の達成が望めないことが判明した。このため、ホール素子を用いた回転角制御へ設計を変更し、新たな回転制御系の試作準備を開始した。以上の進捗状況を踏まえ、当初計画した光学式スリット法に基づくモーター作製のための当初予算の執行を控えた。 ローレンツモーターを、ホール素子を用いた新たな回転角制御装置へと設計変更を行い、その基本部品の設計製作の一部を平成25年度に開始している。平成26年度は、ホール素子を用いた回転制御系(磁場に対して試料面が平行、または直交した回転制御を目指す)の製作費用、および新規な回転系を用いた核磁気共鳴分光実験に繰越金を充当する。
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