研究課題/領域番号 |
24360142
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
川上 彰 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所ナノICT研究室, 主任研究員 (90359092)
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研究分担者 |
島影 尚 茨城大学, 工学部, 教授 (80359091)
兵頭 政春 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所企画室, 専門推進員 (30359088)
田中 秀吉 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所ナノICT研究室, 研究マネージャー (40284608)
武田 正典 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80470061)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光デバイス / 光回路 / 超伝導デバイス / 微細加工技術 |
研究概要 |
本研究課題は新たな光-検出器結合方式として光ナノアンテナ構造を提案するものである。従来一体であった光結合機構と検出器をナノアンテナと微小検出器に分けることで、ナノアンテナによる受光面積の確保と検出器微細化による応答速度の向上を達成し、中赤外から近赤外領域に於ける光検出器の高速化・高効率化を目的としている。 初年度である平成24年度は中赤外光ナノアンテナ設計指針の獲得を目指し、中赤外ダイポールアンテナの負荷抵抗依存性の評価・アンテナ配置の検討を行った。同時に光回路設計に有利なスロットアンテナの検討を開始、60THz付近でのアンテナ動作を確認した。これらの結果から中赤外光領域においても計算機シミュレーションによるアンテナ設計が有効であることを示した。またナノアンテナ作製プロセスによる超伝導特性の劣化は確認されなかった。 平成25年度は、中赤外光ナノスロットアンテナにおけるアンテナインピーダンスの周波数依存性、アンテナ実効面積の評価を実施した。そこで54THzにおけるアンテナインピーダンスとして約50Ωが得られた。一方アンテナ一個当たりの実効面積は3.5um2と小さく、光ファイバー等との接続を考えた際、効率良く入射光を受信する有効受信面積の確保が必要であることが判った。それらの結果から複数のアンテナによる受光面積の増大と指向性の制御を目指し、スロットアンテナからの信号をマイクロストリップ線路で位相を合わせて合成するフェーズドアレイアンテナの設計・試作を実施、同検出器における超伝導検出部の臨界電流、素子抵抗等基礎特性の評価を行った。並行してアンテナ指向性評価のための評価系整備を進めている。一方、中赤外ダイポールアンテナを用いた光検出器では小型冷凍機を用いた光応答特性を測定し、量子カスケードレーザによる波長4.9umの入射光に対して明確な偏波面依存性を伴う光応答の確認に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題研究計画における平成24年度達成目標は、研究遂行上および分担者の変更等からアンテナ指向性評価を後年度に変更したことを除いて実施できている。また平成25年度は冷凍機による光照射実験を開始し、波長4.9umの光照射におけるアンテナ偏波面依存性を検出器の超伝導特性の直接観測することに成功、また中赤外領域でのマイクロストリップ線路の特性評価を行うなど、本研究の目的である光ナノアンテナ構造の優位性の確認に向け、確実に結果を獲得している。最終年度に実施するスロットアンテナのフェーズドアレイ化によるアンテナ指向性評価、アンテナ一体型中赤外検出器の高速応答性の確認により、本研究課題の目的以上の成果を達成できると考えている。現状の研究状況を鑑みて区分②であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始当初の中赤外領域から最終年度までに近赤外領域まで短波長化する計画であったが、光子エネルギーの微弱な中赤外領域での高感度・高速光検出器開発の重要性、光ナノアンテナの有用性実証、及び光照射系整備に係る機器購入の効率化から、中赤外光での研究推進に注力し、本課題目的の光検出器の高速化・高効率化を実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初単一アンテナで評価を予定していたアンテナ指向性の評価実験をアンテナのフェーズドアレイ化後に行うように研究計画を変更したため、同実験系を構築している茨城大への実験に伴う出張を平成25年度に行わなかったため。また、それに関連して中赤外光照射系に用いるフィルタ、治具など光学部品の未購入があるため。 平成26年度にアンテナ指向性の評価実験に伴う神戸-茨城大学間の出張・実験を実施する。また中赤外光照射系に必要な光学部品の購入を平成26年度に実施する。
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