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2013 年度 実績報告書

統計力学的手法による適応信号処理の解析的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24360152
研究機関関西大学

研究代表者

三好 誠司  関西大学, システム理工学部, 教授 (10270307)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードFXLMSアルゴリズム / 適応フィルタ / 能動騒音制御 / 情報統計力学 / 自己平均性 / 学習曲線
研究概要

研究の開始にあたって、まず、解析の対象となるモデルを設定した。そのモデルに基づき、システムの動的ふるまいを少数の巨視的変数で記述した。ここで巨視的変数としては、適応フィルタ係数ベクトルと未知システムの類似度を扱う。適応フィルタのタップ長が十分長い条件において成り立つ自己平均性に基づき、巨視的変数のダイナミクスを記述する連立微分方程式を決定論的な形で導出した。このとき、二次経路(二次音源スピーカからエラーマイクロホンを含む伝搬系)の影響により適応フィルタ係数ベクトルの中には過去のタップ入力ベクトルの影響が入っているので、この相関を注意深く取り扱う必要がある。導出される決定論的連立微分方程式にはいくつかのサンプル平均、すなわち入力に関する期待値が含まれることになるのでこれを解析的に計算した。これらのサンプル平均を連立微分方程式に代入し、解析的、あるいは数値的に解くことにより、巨視的変数のダイナミクスを理論的に求めた。さらに、その結果を用いて、二乗平均誤差を理論的に計算した。その際、一次経路のタップ入力ベクトルのノルムを表す新たな巨視的変数を導入することにより、一次経路が時間的に変化する場合の予備的な解析を実行することができた。また固有値解析を適用することにより定常状態の解析を行い、ステップサイズの上限に関する議論を行うことができた。以上の理論の結果は、並行して行う計算機実験の結果と比較することにより検証した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度は、一次経路が時間的に変化する場合や一次経路に実データを用いる場合について解析することを計画していた。これらのうち、一次経路が時間的に変化する場合については、解析の都合上、そのもっとも単純なモデルとして、一次経路のインパルス応答の各要素に微小な乱数が独立に加わるモデル、すなわちランダムウォークのモデルを仮定し、解析を行った。その結果、ステップサイズが大きいときには誤調整が生じ、逆にステップサイズが小さいときには追随遅れが生じること、およびそれらのトレードオフにより、ステップサイズには最適値が存在することなど、予備的ながら重要な知見を得ることができた。一方、一次経路に実データを用いる場合についても、インパルス応答の要素間の相関として実データの特性を理論に取り込むことにより、実験の結果を定量的に説明できる予備的解析結果を得ることに成功した。本研究のこれらの進展から、おおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

昨年度の研究により、時変な一次経路の場合に関する解析や一次経路に実データを用いる場合の解析について予備的な結果はすでに得られている。また、計算機実験との比較により、その正当性が検証されている。引き続き、本手法による解析を深め、より複雑で現実的な条件に理論を拡張してゆく予定である。具体的には、時変な一次経路の場合の定常解析や、一次経路に実データを用いる場合の詳細な解析があげられる。時変な一次経路の場合については、現在考えているランダムウォークのモデルでは十分長い時間の後には二乗平均誤差は発散してしまう。その解析自体は理論的研究としては有意義であるが、より現実的な時変モデルを考えることにより、さらに応用面からも意義のある解析を行う予定である。また、一次経路に実データを用いる場合についても、必要な要素間相関の範囲などに関して詳細な解析を行う予定である。

次年度の研究費の使用計画

研究がおおむね順調に進展しており、次年度に予定していた学会発表を平成25年度中に行う必要が生じた。このことにより当初予定していた以上の旅費が必要となったため、次年度前倒し支払い請求を行った。しかし、実際に必要な旅費は前倒し支払い請求の額よりも少なかったため残額(次年度使用額)が生じた。
上記の理由により、残額(次年度使用額)が生じた。しかし、この額は前倒し支払い請求によるものなので、もともと次年度に使用する予定の研究費である。よって、次年度にこの額を活用することに特に無理はない。この残額と当初の平成26年度の研究費を合わせた研究費について、研究推進のために必要な物品の購入、研究成果発表のための国内出張と海外出張、研究補助や事務補助の人件費・謝金として有意義に使用する計画である。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (13件)

  • [雑誌論文] Online learning through moving ensemble teachers -An exact solution of a linear model-,2014

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Nabetani and Seiji Miyoshi
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 83 ページ: 054801(6 pages)

    • DOI

      10.7566/JPSJ.83.054801

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Replica analysis of multiuser detection for code division multiple access with M-ary phase-shift keying2013

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Kato, Masato Okada, and Seiji Miyoshi
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 82 ページ: 074802(7pages)

    • DOI

      10.7566/JPSJ.82.074802

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 大画像の複層ベイズ超解像と位置ずれ推定に関する検討2013

    • 著者名/発表者名
      木下俊貴,三好誠司
    • 雑誌名

      情報処理学会論文誌 数理モデル化と応用

      巻: 6 ページ: 119-127

    • 査読あり
  • [学会発表] 一次経路が時変な能動騒音制御の統計力学2014

    • 著者名/発表者名
      江川暢洋,梶川嘉延,三好誠司
    • 学会等名
      日本物理学会年次大会
    • 発表場所
      東海大学(神奈川県)
    • 年月日
      20140328-20140328
  • [学会発表] 時変な一次経路に対するFXLMSアルゴリズムの統計力学的解析2013

    • 著者名/発表者名
      江川暢洋,梶川嘉延,三好誠司
    • 学会等名
      信号処理シンポジウム
    • 発表場所
      海峡メッセ下関(山口県)
    • 年月日
      20131122-20131122
  • [学会発表] 領域ベース複層MRFに基づくベイズ超解像とハイパーパラメータ推定2013

    • 著者名/発表者名
      田中数馬,岡田真人,三好誠司
    • 学会等名
      信号処理シンポジウム
    • 発表場所
      海峡メッセ下関(山口県)
    • 年月日
      20131121-20131121
  • [学会発表] 領域ベースの複層MRFに基づくベイズ超解像2013

    • 著者名/発表者名
      田中数馬,岡田真人,三好誠司
    • 学会等名
      電気関係学会関西連合大会
    • 発表場所
      大阪電気通信大学
    • 年月日
      20131117-20131117
  • [学会発表] マルコフチャネルの能動騒音制御に関する統計力学的解析2013

    • 著者名/発表者名
      江川暢洋,梶川嘉延,三好誠司
    • 学会等名
      電気関係学会関西連合大会
    • 発表場所
      大阪電気通信大学
    • 年月日
      20131116-20131116
  • [学会発表] レプリカ交換を用いたマルコフ連鎖モンテカルロ法による制約充足問題の解の計数II2013

    • 著者名/発表者名
      山崎高寛,三好誠司
    • 学会等名
      電気関係学会関西連合大会
    • 発表場所
      大阪電気通信大学
    • 年月日
      20131116-20131116
  • [学会発表] 多数の動く教師が存在するオンライン学習に関する統計力学的解析II2013

    • 著者名/発表者名
      鍋谷崇裕,三好誠司
    • 学会等名
      電気関係学会関西連合大会
    • 発表場所
      大阪電気通信大学
    • 年月日
      20131116-20131116
  • [学会発表] 能動騒音制御の統計力学的解析2013

    • 著者名/発表者名
      藤原玲,梶川嘉延,三好誠司
    • 学会等名
      第16回情報論的学習理論ワークショップ
    • 発表場所
      東工大蔵前会館(東京都)
    • 年月日
      20131113-20131113
  • [学会発表] タップ長が一般化された適応フィルタの統計力学2013

    • 著者名/発表者名
      三好誠司,梶川嘉延
    • 学会等名
      日本物理学会秋季大会
    • 発表場所
      徳島大学
    • 年月日
      20130927-20130927
  • [学会発表] A theory of the FXLMS algorithm based on statistical-mechanical method2013

    • 著者名/発表者名
      Seiji Miyoshi and Yoshinobu Kajikawa
    • 学会等名
      International Symposium on Image and Signal Processing and Analysis (ISPA2013)
    • 発表場所
      Trieste, Italy
    • 年月日
      20130905-20130905
  • [学会発表] A Study on Bayesian Image Super-Resolution with a Compound Markov Random Field and Registration Parameters2013

    • 著者名/発表者名
      Tanaka, K. and Miyoshi, S.
    • 学会等名
      8th International Symposium in Science and Technology
    • 発表場所
      Kansai University
    • 年月日
      20130823-20130823
  • [学会発表] Counting Solution of Constraint Satisfaction Problem using Replica Exchange Markov Chain Monte Carlo Method2013

    • 著者名/発表者名
      Yamazaki, T. and Miyoshi, S.
    • 学会等名
      8th International Symposium in Science and Technology
    • 発表場所
      Kansai University
    • 年月日
      20130813-20130813
  • [学会発表] Statistical-mechanical analysis of the FXLMS algorithm with nonwhite reference signals2013

    • 著者名/発表者名
      Seiji Miyoshi and Yoshinobu Kajikawa
    • 学会等名
      IEEE International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing (ICASSP2013)
    • 発表場所
      Vancouver, Canada
    • 年月日
      20130528-20130528

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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