径数ミクロン以下の微小気泡を薬液や遺伝の搬送媒体として用いる超音波支援のDDSやGDSは、夢の治療技術として脚光を浴びているが、細胞内への薬液導入の高効率化、および高効率化のための音場、気泡破壊のその場観察技術に課題がある。本年度は、群馬大学医学部核医学講座と共同して、動物実験による薬液導入効率の確認のための実験装置の構築、およびその装置を用いた動物実験を行った。気泡として、直径100ナノメートル程度の標的薬剤を付加できるものを使用し、これを超音波で細胞内に取り込ませ、蛍光顕微鏡で薬液導入の効率を評価した。この結果、有効に細胞内に薬液が取り込まれていることを確認した。一方、音場、気泡破壊のその場確認法として、超音波のカラーフロー画像、パワードプラ画像を用いた新規方法を開発した。この方法は、マイクロ秒オーダーの高時間分解能で気泡の挙動をその場で観測できるものであり、実験を行ったところ、超音波による気泡クラウド形成、気泡クラウドの壁面へのトラッピング、強力超音波照射時の気泡運動と破壊が可視化できた。気泡としては、超音波造影剤として使われているソナゾイドを用いたが、我々が前年度までの研究で開発したトラッピング用の超音波シーケンスにより有効に壁面に気泡クラウドとして捕捉され、その後の強力超音波照射によりトラップされた気泡クラウドが分裂、運動、破壊を繰り返しながら消滅していく様子が観察できた。この方法は、生体組織など工学観察が不可能な媒質にも適用できる方法のため。その場観察法として超音波照射シーケンスの最適化に役立つことが期待できる。
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