研究課題/領域番号 |
24360157
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
岩井 俊昭 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80183193)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 動的光散乱法 / タイムドメイン低コヒーレンス動的光散乱法 / スペクトルドメン低コヒーレンス動的光散乱法 / ワンショット動的光散乱法 / wall-drag / 自己組織化析出法 / 異相境界物性 / 共通経路干渉動的光散乱法 |
研究概要 |
タイムドメイン低コヒーレンス動的光散乱法の高精度化とwall-drag効果の直接観察については、SuperK EXTREMと波長可変フィルタSuperK VARIAの組み合わせ光源を用いることによって散乱体積は空間的に極小域に局在化させ、スーパールミネッセントダイオード光源の場合の軸分解能16umに比して1.8umを実現した。それによって、ガラス容器の内面と懸濁液との境界に発現するwall-drag効果について、抑制拡散運動領域から自由拡散運動領域までシームレスに直接観察することに世界に先駆けて完全成功した。 フーリエドメイン低コヒーレンス動的光散乱法の高精度化について、SuperK EXTREMと波長可変フィルタSuperK VARIAの組み合わせ光源を用いて実験研究を行ったが、光源のスペクトル形状の不安定さが原因で成功に至らなかった。これを解決すべく、石井らと楕円アルゴリズムを用いた光伝搬モンテカルロシミュレーションを用いて数値実験によって検証を行った。この課題の実験的研究は、平成26年度も引き続き行う。さらに、研究の過程で、フーリエドメイン法の特長を活かしかつ高精度化が見込める新しい共通経路干渉動的光散乱法を考案したので実証実験の準備に着手した。 フーリエドメイン動的光散乱法を高分子溶液における自己組織化析出現象の粒子成長解析に応用するため、平成24年度の空間展開に対して、平成25年度は時間展開について実験的検証を行った。その結果、時空間における粒子成長速度分布と粒径分布の関係を明らかにした。 以上、平成25年度は、6件の査読付き論文を公表し、3件の招待講演を含む10件の国際会議と3件の国内会議にて研究発表を行い、フーリエドメイン動的光散乱法の高精度化を除き研究計画に沿って研究を実施した。研究の過程で、高精度計測が期待できる新しい共通経路干渉動的光散乱法を考案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 光学系のシステム構築は、計画に沿って進行している。 2 固液ならびに気液界面におけるwall-drag効果については計画を上回る成果をあげている。特に、気液界面の成果については,内外の学会での講演を行い、学術論文に成果を公表した。 3 広帯域光源を用いた高精度化については、タイムドメインについて軸分解能1.8umを実現し、計画通りの数値を得た。しかし、フーリエドメインについて光源のスペクトル形状の不安定さが原因で、成功に至らず継続研究とした。 4 フーリエドメインの特長を活かした、新しい共通経路干渉動的光散乱法を考案し、実証研究に着手している。 5 気液界面で発現する自己組織化析出現象については、時空間展開する粒子成長について実験研究が終了し、本研究で開発した低コヒーレンス動的光散乱法を応用する条件を整備した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究目標は、 (1)フーリエドメイン動的光散乱法において,広帯域光源の導入による断層精度1umを達成すること、 (2)新しい共通経路干渉動的光散乱法の実証研究を行うこと, (3)自己組織化析出現象の高分子核形成を開発した低コヒーレンス動的光散乱法によって高精度観察すること、 (4)(1)と(2)については現システムを利用し上半期に行い、(3)は(1)と(2)の実績を踏まえて下半期に実施し、本研究の成果と実績をまとめ、報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究目的は高精度ワンショット低コヒーレンス動的光散乱法の開発と自己組織化析出現象の直接解析である。 平成25年度では、フーリエドメイン法の高精度化は成功に至らず、自己組織化析出現象解析を実施できなかった。一方、タイムドメイン法では、高精度化に成功した。実時間性を追求するためには、高精度ロングストロークピエゾステージが必要であった。平成25年5月のドイツ/ミュンヘンにて開催の国際会議の機器展示会でPI社(ドイツ本社)が発売予定という最新情報を得ていたが、市場に流通していなかった。このため当方が所有している対物レンズ自動焦点ピエゾステージとモーターステージを組み合わせることによって代用した。日本での発売予定は未定であったがPI支社と交渉をしつつ、タイムドメイン法の研究を進行させた。納入価格が高額であることも予想されたため、基金分の支出を抑えて購入に向けて計画したため、次年度使用額が発生した。 平成26年度では、基金分の繰越金が2475千円、交付申請額が1600千円であるため、合計で4075千円の直接経費となる。平成26年度は、備品として高精度ロングストロークピエゾステージ1500千円を交付申請書に申告している。タイムドメイン動的光散乱法を気液界面観測用に変更するための部品と高精度化が見込まれるフーリエドメイン共通経路干渉動的光散乱法に使用される光学部品を消耗品費として1000千円、3件の国際会議と4件の国内会議の旅費1200千円、論文投稿料と会議参加料などのその他の費用として300千円程度を予定している。
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