低コヒーレンス動的光散乱法は,検出と参照アームを有する2光路光学系を用いる.外部雑音によってアームが独立に振動すると干渉現象が阻害されるため,サブミクロン粒子計測においては重大な問題となる.H25年度の研究によって,検出アームの光ファイバ出射端面またはガラスセルの表面からの反射光を参照光として利用することを考案した.この場合,外部雑音によって光学系が振動しても,検出光と参照光が同一のファイバを伝搬するため干渉が阻害されないことが期待できる. H26年度は,この新しい計測法の実証実験を行った. 光源からの光をサーキュレータまたは2×1ファイバカップラを介して,検出ファイバに導波する.ファイバ端面またはガラスセル表面からの反射光と粒子溶液の内部からの散乱光は,検出ファイバに再結合され,サーキュレータまたはファイバカップラを介して,高速分光部へ導波され,干渉スペクトル強度分布として検出される.サーキュレータは光路変換をほぼ損失なく行えるが,波長依存性が強くかつ高価である.ファイバカップラは他方向への光エネルギーの漏れが発生するが,波長の依存性が緩和されかつ極端に低価格である. 濃厚なサブミクロン粒子溶液の粒径測定を行った結果,両測定計では差異がないことを確認した.さらに,耐外部振動性が高く,干渉計特有の精密調整が不要であり,かつ光学系を大幅に簡素化できることも確認した.新しい粒子計側法として有効であるとの結論を得た. H26年度の研究は前年度までの知見に基づいてはじめて考案できたものであるため,最終年度であるが研究を拡大実施した.その結果,1件の査読付欧文学術論文,3件の国内学会と1件の国際会議に発表を行い,外国1件と国内1件の特許出願を行った.2件の日本光学会主催の講習会の講師として招待講演を行い,本研究の知見を紹介した.また,2件の欧文学術誌の投稿と米国・欧州特許への申請の準備中である.
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