研究課題/領域番号 |
24360159
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
笠原 禎也 金沢大学, 総合メディア基盤センター, 教授 (50243051)
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研究分担者 |
小嶋 浩嗣 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (10215254)
後藤 由貴 金沢大学, 電子情報学系, 准教授 (30361976)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 信号処理 / 計測システム / 地球惑星磁気圏 / プラズマ波動 / 電波科学 / 衛星通信 / 宇宙科学 / 自律制御ソフトウェア |
研究実績の概要 |
宇宙プラズマ環境の高機能計測を実現するために、複数の小型衛星が相互連携して同時多点観測を行うために必要な技術と、電磁波計測データを用いて宇宙プラズマの空間構造やダイナミクスを解明する信号処理技術をテーマに研究を実施した。今年度は、下記の項目について重点的に検討し、それぞれ良好な成果を得た。 1 小型衛星への測器搭載に必須である電磁波受信器の小型化・高性能化のために、従来はCPU上でソフト的に行っていた波動信号処理と地上伝送用データ生成部を、プログラマブル論理素子(FPGA)上で高速処理する方法について検討した。本検討は、本研究課題で昨年度までに製作した専用FPGAボードを利用した。その結果、波形のサブバンド圧縮処理部の汎用モジュール化に成功し、VLF帯の波形においては十分リアルタイム処理が可能であることを実証した。 2 内部磁気圏を飛翔する2基の編隊衛星であるVan Allen Probesの波動観測データを用いて、同時多点観測データから地球プラズマ圏の時間空間変動を独立して推定する方法を検討した。さらに、内部磁気圏中の電磁イオンサイクロトロン波(EMIC)の空間分布や伝搬特性を利用することで、種々のイオンの空間分布や組成比を推定する方法について提案した。 3 あけぼの・かぐやなどの科学衛星で得たプラズマ波の波形や位相特性から、地球ならびに月近傍で観測される波動の発生・伝搬特性の解析を行い、雷起源電波の伝搬特性とそこから得られるVLF波の電離層・プラズマ圏内の伝搬特性とその季節・ローカルタイム依存性、月ミニ磁気圏やウェイク構造の推定など、プラズマ波の伝搬特性から太陽・地球系プラズマ環境の推定における電磁波計測データの有効性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電磁波受信器を小型化しつつ高性能化を実現する上で必須技術であるデジタル信号処理部のFPGA化が順調に進んでおり、すでにVLF帯観測信号の波形圧縮についてはリアルタイム処理が可能なレベルに達している。さらに、将来の複数同時多点観測を視野に、既存衛星の観測データからプラズマ環境の時空間変動の独立解析や、波動の伝搬特性からプラズマ密度やイオン組成等を逆推定する成果が多数得られている。以上より、本研究は順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる次年度に向け、以下の項目についてさらに研究を進める。 1 電磁波動観測データの機上処理の小型・高性能化にむけ、設計済みの波形圧縮モジュールの動作の安定性や信号の圧縮精度の定量的な評価を実施する。また波動の伝搬方向推定に必須となるスペクトルマトリクスの機上生成法について検討を進める。 2 複数波が同時到来する条件下での波動の伝搬方向を正確に行えるように、機上処理データの生成手法と取得データからの推定アルゴリズムの整合性を検証する。 3 既存の科学衛星で得られた電磁波動観測データから、プラズマ中の電子密度やイオン組成の空間分布や時間変動を推定する手法について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までに製作した専用FPGAボードの評価において、FPGAボードのハードウェア的な障害や改良が必要となったときの設計・製作費を予算執行目的の一つとしていたが、大きな障害もなく信号処理モジュールの開発が進んでいる事、またデータの処理や評価のために研究補助作業を謝金で賄うことも想定していたが、研究補助を必要としない範囲で実験・解析が行えたため。その他の執行計画はほぼ予定通り進んでおり、研究計画への影響はない。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度に当たるため、次年度に繰り越した研究費は、国際会議などの成果報告や学術論文の出版費など、研究成果の公表に重点的に充てる形で予算執行する予定である。
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