研究課題/領域番号 |
24360160
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
穂積 直裕 豊橋技術科学大学, 国際協力センター, 教授 (30314090)
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研究分担者 |
吉田 祥子 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40222393)
山本 清二 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 教授 (60144094)
西條 芳文 東北大学, 大学院医工学研究科, 教授 (00292277)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超音波顕微鏡 / 生体組織 / 弾性イメージング |
研究概要 |
本研究では、SP波(縦波と横波)複合モードによる生体軟組織の粘弾性マイクロイメージングを可能とする超音波顕微鏡の実現を目指している。平成25年度は、横波による観察に適したシステムを試作するとともに、肝癌を発症したマウスを試料とした生体組織観察を行い、その性能を確認した。 (1) 基板の選定:縦波の多重反射と横波応答が重畳しにくい材料として、アクリル樹脂を選定した。 (2) 測定装置の試作:健康なラットの脳組織やゴム材料などを縦波で観察して測定結果の妥当性を確認するとともに、横波による定量観察を行い、ずり弾性係数によるイメージングを行った。これにより「マイクロスケールで生の状態で非接触・非侵襲で硬さ分布を見る」手法を提案した。送受されるパルス波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求め、予め計算した結果と比較することによって縦波・横波の特性音響インピーダンスを推定した。生体軟組織は粘性を持つため、参照波形で規格化した横波のスペクトル成分は周波数に依存する複素数となる。これより求められる信号強度と位相が、粘弾性の推定に十分な精度をもつことを確認し、解析のためのプログラムを作成した。 (3) ラットの脳組織の観察:肝癌を発症したマウスの病変部および正常部を縦波および横波で定量観察し、その結果をもとに、体積弾性率、ずり弾性率、粘度にもとづく、「硬さのマイクロイメージング」を試みた。その結果、粘性が高く表示される部分と、抗体染色によって患部と認められた部分がよく一致することが示された。今後再現性を確認するとともに、計算精度の向上対策などの検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標である、装置の試作、データ取得と、音場解析結果から粘弾性を推定するプログラムの作成が完了していること、および、その成果を利用して肝癌の観測と患部のハイライティングに成功していることなどから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までに、集束超音波の応答特性から体積弾性率、ずり弾性率および粘度を計算し、画像化する方法の妥当性を概ね確認できたと考えている。今後は実用化に先立ち画像の改善、特に収差の補正などの課題を解決するとともに、医学生物学研究者と協同した応用範囲の拡大が必要と考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に超音波振動子を更新するとともに、ステージについては部品を組み合わせた自作品で対応したため、差額が発生した。 使用していた流用品のデジタルA/Dボードが経年劣化したため、波形観測用に新設する。これらを使用し、波形処理に基づく画像の品質改善などを行うとともに、実用化に当たっての問題点を明確にし、製造メーカーに引き継ぐ。
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