研究課題
24-25年度の研究に引き続き、複数のウシの長骨(大腿骨を使用)の皮質骨で作成した超音波トランスデューサを用いて、骨の圧電的な性質を検討した。まず骨軸方向と半径方向の皮質骨中の圧電性能を比較し、10kPa程度の音圧照射では骨トランスデューサの出力電位が同程度、つまり骨の圧電性能の異方性の影響が小さい可能性を示した。ただし骨の微細構造によりこの圧電性能は変化した。また、照射超音波の圧力の正負と出力電位の極性についても検討した。骨軸方向に音波が伝搬した場合、正圧では近位部に負、遠位部に正の電位が誘発されることを確認した。この傾向はどの骨トランスデューサにおいても同じであり、生体内で圧電の極性がユニークに決まっている可能性が確認された。一方、骨内の音波伝搬による電位分布変化を検討するため、圧電を考慮したシミュレーション手法の検討を行った。具体的には超音波伝搬の支配方程式に圧電方程式を組み込んでFDTD法の定式化を行い、プログラムを作成した。このプログラムを用いて、まずPZT セラミックス中の超音波伝搬について、FDTD法によるシミュレーション結果を実験結果と比較した。観測波形とシミュレーションによる推定波形はよく一致し、プログラムの 妥当性が示された。次に、骨中の骨軸方向の圧電性を考慮し、その値を圧電フィルムの1/1000程度として、圧電性がない場合とある場合の皮質骨中の超音波伝搬のシミュレーションを行った。その結果、骨の圧電効果は骨中の超音波伝搬にほとんど影響を及ぼさないことが示された。このように、骨トランスデューサを用いた実験とその結果を応用したシミュレーションを組み合わせることにより、超音波照射時の音波伝搬・誘発電位のメカニズムを明らかにし、効果的な超音波骨折治療を行うための新しい知見を得た。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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