研究概要 |
本研究の目的は,大規模非線形システムにおける時空間パターン制御の理論と実時間最適化アルゴリズムを構築し,それらを現実の問題に応用することである.具体的な課題は,1)時空間パターンの安定性と可制御性を解析する方法の解明,2)時空間パターン制御の実時間最適化アルゴリズム開発,3)並列計算やプログラム生成など時空間パターン制御の実装環境開発,4)スマートグリッドにおける需要誘導や反応拡散系におけるパターン形成に対する時空間パターン制御の応用,である. 平成24年度には,時空間パターンの解析に関して,反応拡散系の数値シミュレーションによる予備検討を行い,時空間パターンの挙動を再現する簡易モデルに必要な条件を考察した.また,あるクラスの偏微分方程式に支配されるシステムを制御する問題において,最適化問題の特殊な構造に着目し,ある条件の下では簡易な計算によって最適化が行えることを示した.これによって,計算量を従来手法の1/5程度に低減できた.実装環境に関しては,実時間最適化アルゴリズムの並列処理について検討を行った.OpenMPというAPIを用いて逐次計算と並列計算の計算時間を比較したところ,現状の実時間最適化アルゴリズムの場合,並列処理のオーバーヘッドが大きく,並列計算による計算時間短縮は見られなかった.したがって,アルゴリズム自体を並列計算に適したものに修正する必要があることが分かった.さらに,鉄鋼プロセスにおける製品ばらつきの抑制,スマートグリッドにおける需要誘導などの応用にも取り組み,現時点では問題設定が限定されるものの,実時間最適化による制御の有効性を示した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,実時間最適化アルゴリズムの改良に取り組む.その際,並列計算への適合性も考慮するとともに,数式処理によるアルゴリズム実装環境の整備にも並行して取り組む.また,パターン形成とスマートグリッドに対する応用に関しても,問題設定を発展させていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
分担研究者が当初想定したほどの予算を要さずに研究成果を上げることができた.そこで,一部の助成金は,次年度において,並列計算と数式処理に関して連携研究者および外部専門家の助言を仰ぐための出張旅費や,今年度後半に得られた研究成果を発表するための学会参加費,論文掲載料等に使用する.
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