研究概要 |
本研究は,種々の材料・配合および養生条件のコンクリートの性能を的確に評価する手法を構築することを目的として,以下の二つの検討を行った. i)セメント系硬化体が水和物の集合体であることから,水和物個々の性質を明らかにし,それを積算していくことによって,硬化体全体の物理化学的特性を評価する. ii)材料・配合・養生の異なるセメント系硬化体の水蒸気吸着等温線を測定し,硬化体の空隙構造および物質移動性を評価する. その結果,以下のような成果を得た. (1)任意の湿度環境下においてCaO/SiO_2モル比とH_2O/SiO_2モル比が直線関係となることを明らかにし,C-S-Hの水蒸気吸着量をその組成に基づいて推定する式を提案した. (2)セメント系硬化体を構成する各種水和物の生成量,比表面積,ゼータ電位を積算することにより,実際のセメント系硬化体のゼータ電位を精度良く推定することが可能となった. (3)セメント硬化体中のカルシウムアルミネート系水和物の比表面積の推定では,アルミネート相の反応率とC_3AH_6生成量のみを把握すればよいことを明らかにした. (4)高炉スラグ微粉末とシリカフユームを併用した配合においては,空隙構造の屈曲度の増加により塩化物イオン実効拡散係数は大きく低下した.屈曲度の増加は,水和物の大部分を占めるC-S-HのC/S比が低下し,C-S-Hの比表面積が増加したことが原因であることを明らかにした. (5)養生条件の相違がコンクリートの諸特性に及ぼす影響の程度は結合材種類により異なること,同程度の圧縮強度を有する高温養生コンクリートと常温養生コンクリートとでは収縮特性,物質移動特性が大きく異なることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,合成水和物,硬化体を試料として,水和物の各種性質を測定する.特に長期材齢の測定結果を加える.また,前年度の測定で問題のあった試料の再測定を行う.
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