本年度の研究においてはコンクリートの透気性係数の含水依存性に着目し、コンクリートの含水率と透気係数の関係を明らかにし、さらに、本研究により得られた透気係数と含水率の関係からコンクリートの密実性および耐久性能を適切に推定する方法について検討することを目的とした。 本年度の研究の範囲において透気係数の測定試験方法、供試体の水セメント比および養生条件にかかわらず、含水率の低下に伴い透気係数が増加することが分かった。また、含水率が3.5%から5.0%の範囲内で透気係数と含水率の間に線形関係が得られ、この線形関係を用いてコンクリートの耐久性能を推定できることが示唆された。同じコンクリートに対して実施した電気泳動試験および促進中性化試験から得られた塩化物イオンの実効拡散係数と促進中性化速度係数を比較した結果、透気係数と含水率の線形関係の勾配と促進中性加速度係数の関係は水セメント比あるいは養生の方法の違いによらずほぼ直線関係になることが認められた。この直線関係を用いることにより、実構造物のかぶりコンクリートで測定された透気係数と含水率の関係の勾配から促進中性化速度係数の評価が可能となる。一方、実効拡散係数と透気係数と含水率の関係の勾配との間には水セメント比によらず直線関係が得られたが、養生条件によって異なった直線関係となった。特に気中養生したコンクリートにおいては材齢の経過とともに実効拡散係数が増加しており、実効拡散係数に関しては透気係数と含水率の関係の勾配は適切な指標とはならなかった。 今後の課題として、塩化物イオンの実効拡散係数に関して、経時変化のメカニズムと養生の違いによる塩化物イオンの拡散性状の違いを解明して、透気係数による評価で考慮すること、および本研究で提案する手法の妥当性を検証するため、実構造での計測データの収集・蓄積が必要である。
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