研究課題/領域番号 |
24360174
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
横田 弘 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50344312)
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研究分担者 |
佐藤 靖彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60261327)
加藤 絵万 独立行政法人港湾空港技術研究所, 構造研究チーム, チームリーダー (90371765)
渡部 靖憲 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20292055)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 維持管理 / 無筋コンクリート構造物 / ひび割れ / 防災機能 / 劣化度 / 耐荷力 / 点検診断 |
研究概要 |
本研究は、海岸線に位置する無筋コンクリート長大構造物の劣化・変状の程度を総合的に表す客観的かつ実用的な指標を、構造物の性能および防災機能と直接リンクさせて提案する。そのために、①構造物に生じた劣化・変状の数値化と類型化、②劣化・変状を有する構造物の残存性能の評価、③防災機能とリンクした変状限界の検討の3つの課題に対して、各担当研究者が密に連携しつつ研究を進めた。 課題①に対しては、北海道(銭函海岸と富岸海岸)、富山県(新湊海岸)、岡山県(寄島漁港海岸)、大分県(別府港海岸)の5海岸において長大無筋コンクリート構造物の代表である護岸や防潮堤の胸壁等を対象に現地調査を行い、ひび割れの幅、深さ、長さ等を定量化した。そして、部材の大きさに関連付けて、ひび割れ幅、本数等の統計解析を行い、極値統計等も活用してひび割れに代表される構造物の劣化・変状の形態を分析し、類型化した。 課題②に対しては、解析モデルの改良を検討し、合わせて解析コードの機能拡張を行った。解析モデルの妥当性の確認のための載荷実験を実施するための準備を行い、小型の無筋および鉄筋コンクリート模型試験体作製を進めた。 課題③に対しては、昨年度に検討した精細シミュレーションモデルに対して、局所的な長大構造物の変状が浸水を通して誘発される連動型構造物崩壊の物理メカニズムの解明だけではなく、崩壊後の浸水を低減する構造物全体の性能、避難時間を確保するための耐性そして浸水領域から推定できる陸域被害について総合的に数値的指標化を行った。その結果から構造物の局所的変状をシミュレータにおいて確率的に表現する手法について検討し、防災機能への影響についての解析方針を検討した。 これら3つの課題への対応とともに、これらの成果から総合劣化度指標の設定および予防保全のための変状の限界値の設定について検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海岸構造物の調査は、当初予定どおり現在までに10海岸において完了し、データが順調に蓄積できている。平成26年度に海岸構造物の調査を追加で実施し、変状の数値化と類型化のために必要な量と質のデータは入手できる。また、調査成果を元に構造解析モデル、被災シミュレーションモデルの構築・改良も進んでおり、研究期間内に構造物の性能低下の数値化および破壊確率の上昇に関するシミュレーションは実現可能である。解析の検証のために行う載荷実験は、試験体の設計等に時間を要したため実施が若干遅れ気味ではあるが、問題ない。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定どおり今後の研究を進める。今後も構造物の現地調査を実施するため、国土交通省および水産庁と情報交換を行っている。各課題の進捗を確認し、連係を密にするための打合せを年に少なくとも2回実施するよう計画をしている。引き続き学会講演会等で関連する最新情報を収集し、研究情報として活用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地調査の際の旅費に、割引航空券を購入するなど節約を行ったこと、および載荷実験において試験体の数量などを見直した結果、次年度使用額が生じた。 未使用額のうち559,950円は前年度に納品されたプログラム改良、実験用消耗品、謝金の4月支払いに充てる。さらに、経費の節約等により生じた未使用額262,274円については、できるだけ多様な条件下で多くの海岸構造物を選定して調査を行うことが研究のためには不可欠であるので、調査対象箇所と延長を増やしたいと考えており、そのための調査研究旅費として使用する予定である。また、載荷実験のケース数を増やして検討することを予定しており、そのための試験体製作に使用する予定である。
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