| 研究概要 |
本研究では,橋梁ストックの大半を占める中小スパン橋梁の効率的かつ迅速な診断を可能にするため,振動データの収集が容易である交通振動の利用に着目し「橋梁の加振やデータの収集・分析を移動点検車両が走行しながら行う移動点検手法の開発」と,モニタリング結果から「統計的推論に基づき対象橋梁の異常を判断する意思決定支援システムの提案」が本研究の目的である.
平成24年度には,「非定常連成振動系のシステム同定手法の構築」,「統計的パターン分析手法の構築」および「模型実験装置,無線センサ,長期モニタリング対象の実橋梁の計測機器の整備」の三つの項目について研究を進めてきた.それぞれの項目について以下のような成果を得ている.
(1)非定常連成振動系のシステム同定手法の構築:ウェーブレット係数を損傷指標とし,損傷橋梁上を走行する車両振動に潜んでいる橋梁の振動特性の変化の検知可能性をシミュレーションによる検証している.また,ばらつきの多い非定常連成振動系の同定結果からモニタリング対象となる振動特性の効率的な抽出のため,多次元自己回帰モデルによる同定結果に統計的抽出法を組み合わせた新しい分析法(SAMAR : Stabilization diagram Aided Multivariate AutoRegressive)の構築に成功している.
(2)統計的パターン分析手法の構築:橋梁の損傷による異常を合理的に検知するため,抽出した振動特性の損傷前後の統計的性質の違いを定量的に評価できる手法として,Mahalalobis-TaguchiSystemに着目し,不規則非定常振動データから橋梁の異常判断にかかわる情報を精度よく推定する手法の構築にも成功している.
(3)模型実験装置,無線センサ,長期モニタリング対象の実橋梁の計測機器の整備:実橋実験の一部の実験が計画より早く実現できたため,実橋梁計測のための計測機器の一部を整備し,実橋実験に優先した.その結果,模型桁実験装置の整備には至っていない.
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| 次年度の研究費の使用計画 |
前年度は,実橋実験の一部の実験が計画より早く実現できたため,実橋実験を優先し,模型桁実験装置の整備に至らなかった.その結果,直接経費の次年度使用額が発生している.今年度は模型桁実験浮計画されており,模型桁実験の先に直接経費の次年度使用額を用い模型桁実験装置の整備を行う計画である.これによる研究目標達成への影響はない.
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