研究課題/領域番号 |
24360185
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
秋山 充良 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00302191)
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研究分担者 |
小野 潔 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60324802)
高橋 良和 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10283623)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 塩害 / 信頼性理論 / 鉄筋コンクリート / 破壊確率 / ハザードカーブ / フラジリティカーブ |
研究概要 |
平成25年度に実施した研究の実績概要を以下に示す. (1)塩害による劣化を受ける鉄筋コンクリート構造物において,鋼材腐食の発生確率を算定する手順を提示した.これは,(i)塩害環境ハザード評価,(ii)塩化物イオンの拡散予測とフラジリティカーブの作成,(iii)鋼材腐食の発生確率pfの算定,の3つの段階から構成される.塩害環境ハザード評価では,飛来塩分量の距離減衰式を作成し,ある特定の値を超過する確率(ハザード曲線)を求めた.塩化物イオンの拡散予測は,Fickの拡散方程式により行い,既往の実験結果のデータベースなどに基づき,拡散予測に関わるパラメータの統計量を設定した.そして,ある飛来塩分量の作用下で鋼材腐食が発生する条件付確率をMonte Carlo法により求め,フラジリティカーブを作成した. (2)鉄筋腐食が生じる確率pfを要求レベルに漸近させることが可能な設計かぶりを算定できる安全係数と設計規準式を示した.これにより,地域や海岸線からの距離が異なる場合や,海岸線近傍で標高が異なる場合,さらにはコンクリートの品質(水セメント比)が異なる場合でも,鋼材腐食の発生確率を概ね揃えることが可能となる.また,将来的に,あらゆる環境作用や荷重に対して,使用限界状態などが生起する確率を統一するための基礎的検討として,現行の耐震設計規準を満足するRC橋脚において,耐用期間内に曲げ降伏が生じる確率を算定し,これを鋼材腐食発生確率の要求レベルに設定することで,耐久信頼性と耐震信頼性の整合を試みた. (3) 本研究で提示した耐久信頼性設計法は,種々の仮定のもとに得られたものであり,さらなる改善が必要である.今後,塩害環境下にある鉄筋コンクリート構造物の性能照査を信頼性理論に基づく限界状態設計法の枠組みの中で実現するための諸課題を整理した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析的な研究については,塩害環境ハザード解析,リスク評価,耐震解析,あるいは構造同定解析など,複数の解析方法をインテグレーションし,マルチハザードを受ける橋梁のライフサイクルにわたる安全性評価を可能にするフローを構築するなど,着実な成果が出ている.実験的な研究についても,平成25年度は,平成24年度に準備した実験装置を用いて,鉄筋コンクリート構造物内で生じている鋼材腐食の可視化に成功し,あるいは震動実験も実施するなど,当初の予定通りの実験を着実に遂行できた. この状況から,研究計画全体としては,概ね順調に進展していると自己評価する.
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今後の研究の推進方策 |
構築しているライフサイクルマネジメントの各要素技術の高度化を図るため,実験と解析の融合をより一層推進し,数値計算や検査技術の向上を図る予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験備品を大量に購入した結果として,業者の割引が得られたことで,51332円の繰越金が発生した.別に示したように,研究としては着実に消化できており,研究の遅延が原因で繰越金が生じたわけではない. 実験消耗品(ひずみゲージ,アセトン,リード線)等の購入費用として使用する.
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