研究課題
本研究では地盤の液状化特性について、特に2011 年東北地方太平洋沖地震後に浮き彫りとなった課題を追求することを目的としている。本地震による顕著な液状化は非塑性細粒分を大量に含む埋立地盤で生じた。また、地震動継続時間が非常に長かったことも被害を拡大させた原因の一つと考えられている。しかし、震災後の地盤調査で行われ不撹乱試料による一連の液状化試験では、地震時に顕著な液状化が発生したと考えられる埋立地盤の液状化強度は非常に大きくなり、実際の現象を説明することが難しい。これは不撹乱試料採取時の乱れにより、土粒子間の構造が強化されたものと推測される。平成24年度の活動では、上記埋立地盤で採取された乱れた地盤試料を、不撹乱試料と同等の密度、かつ原位置で計測された弾性波速度と同等の値になるよう再構成し、一連の液状化試験を実施した。その結果、密度と弾性波速度を調整した再構成試料の液状化強度は採取時に乱れた可能性のある不撹乱試料の値と比較して非常に小さくなった。一方、埋立地盤の下位に分布する沖積地盤については、不撹乱試料の弾性波速度は原位置の値と同等であることを確認し、その乱れは小さいことが示された。これらの室内試験結果を基に、東北地方太平洋沖地震の本震の波形を用いた一次元有効応力解析を実施した。その結果、不撹乱試料によるパラメータを用いると、埋立地盤の過剰間隙水圧比は0.2程度であり液状化には至らなかったが、弾性波速度を調整した再構成試料では過剰間隙水圧比は1.0に近くなり、実現象と整合する結果が得られた。また、沖積地盤では液状化は生じなかったことも示された。現場調査に関しては、東北地方太平洋沖地震の液状化被災地だけでなく、2013年に発生した淡路島の地震で生じた埋立地盤の液状化の調査も実施した。
2: おおむね順調に進展している
従来、乱れの生じる可能性のある不撹乱試料に代えて、弾性波速度を調整した再構成試料の有効性を指摘する研究はこれまでにも存在していたが、その知見がケーススタディとして適用された例はほとんどない。本研究では原位置採取試料と当該採取箇所で実施された原位置試験結果に基づいて作成した試料により検討を進め、解析でも実現象の再現に成功した。この成果は、ケーススタディの域に留まらず、簡易でかつ精度の高い液状化予測手法の開発や、従来の試料採取法の適用範囲の評価にも繋がる非常に有益なものであり、研究は非常に順調に進められていると考える。
2011年東北地方太平洋沖地震では細粒分を多量に含む地盤が液状化した。25年度の成果を踏まえ、所定の細粒分、密度の地盤が示し得る弾性波速度と液状化強度の範囲を明確にし、従来の液状化検討手法の改善に資するデータを収集する。また、液状化が発生した地盤にて異なる手法で採取した不撹乱試料を入手し、その品質と液状化強度に及ぼす影響を検討するとともに、所定の地盤条件における最適なサンプリング手法を提案する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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