研究概要 |
盛土をはじめとする土構造物の豪雨による崩壊事例が幾つか報告されている.降雨による盛土崩壊には幾つかの発生要因が考えられるが,最も重要な要因は浸水時の地盤の強度低下と有効応力の変化およびそれに伴う変形・破壊である.既往検討では,間隙に空気を含む不飽和土は,土粒子間に存在するメニスカス水の表面張力によって粒子間の滑りが抑制されることが指摘され,圧縮・せん断試験における不飽和土の剛性は飽和した同じ土よりも高いことが示されてきた.これは逆に,降雨浸透によって飽和度が増加すると土粒子間のメニスカス水が減少して表面張力の作用が消失し,それに伴う変形,いわゆる浸水コラプスを発生することを意味している.しかしながら,このような不飽和土の浸水・変形・破壊メカニズムを確かな力学に基づいて記述し,土構造物の築造過程から浸水による変形・破壊過程まで解析的に評価した事例はこれまでなかった. 本研究における第一の目的は,初期値・境界値問題としての降雨時の土構造物の崩壊現象をシミュレートするに際して,予め要素レベルでの浸水・変形挙動を適切に記述する構成モデルおよび水分特性曲線モデルを開発することである.これに対して初年度である平成24年度は,不飽和土の水分保持特性について既往研究の成果をレビューするとともに,吸排水に伴うヒステリシスや体積変化による飽和度変化の影響も考慮した発展型の水分特性曲線モデルを定式化し,その妥当性を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題名であり,最終目標でもある「築造過程から豪雨による変形・破壊まで,盛土の一生を解く」 を達成するためには,不飽和土の応力ひずみ特性および水分特性を適切に記述できる構成関係が必須である。初年度は着実に検討を進めて,水分特性を記述する発展型水分特性曲線モデルの開発に成功しており,計画は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
不飽和土のモデルの検証・改良を進めるとともに,土・水・空気三相系の浸透一変形連成解析コードを開発し,盛土の築造から崩壊までを解く。開発した解析手法により,豪雨・長雨を想定した降雨条件,盛土の締固め条件,排水工や各種補強法を考慮した盛土の降雨崩壊シミュレーションを行い,盛土の崩壊メカニズムの解明を試みる。
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