研究課題/領域番号 |
24360194
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中川 啓 長崎大学, 大学院水産・環境科学総合研究科, 教授 (90315135)
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研究分担者 |
高尾 雄二 長崎大学, 大学院水産・環境科学総合研究科, 教授 (20206709)
朝倉 宏 長崎大学, 大学院水産・環境科学総合研究科, 准教授 (00391061)
斎藤 雅彦 神戸大学, 大学院工学研究科, 助教 (40283915)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 硝酸態窒素 / 地下水汚染 / トレーサー試験 / コプロスタノール |
研究概要 |
硝酸態窒素による地下水汚染が明らかとなっているフィールドを用い、新たなトレーサーとしてコプロスタノールの利用を検討することを目的としてH24年度より研究を開始した。初年度にトレーサー試験を行うための観測孔を設置し、深度方向のサンプリングや研究対象地域の汚染状況を把握するためのサンプリングと分析を行ったが、今年度も観測孔および研究対象地域における2ヵ月に1度のサンプリングは継続しており、汚染状況の時間的な変動特性と空間的な広がりを把握するとともに、分析結果を用いた主成分分析やクラスター解析といった多変量解析による統計的処理を行い、サンプリング地点特性の分類を行った。その結果、硝酸態窒素汚染の影響を受けたサンプリング地点は、明確にその他の地点とは分離されることが分かった。昨年度とりまとめた水質分析結果の解析については、今年度10月の地下水学会において口頭発表した。また12月には、本研究に対してもレビューを戴いている海外研究協力先であるスウェーデン、ルンド大学のセミナーにおいても口頭発表し、有益なコメントを得ることができた。 また初年度に明らかになったこととして、コプロスタノールそのものをトレーサー物質として試験に適用することは困難であるため、今年度は、まずトレーサー試験体制を確立するために、低濃度の塩水をトレーサーとして用い、計4回のトレーサー試験を実施した。今年度は、単孔式のトレーサー試験であるポイントダイリューション法により、現場を流れる地下水の流速と透水係数を把握することができた。計4回のトレーサー試験を実施する中で、トレーサーの投入方法や本課題で購入したサンプラーを用いた試験方法など、試験体制を確立する上での種々の知見を得ることができた。 地下水汚染のトレーサーとして利用を検討しているコプロスタノールをその他の化学物質のトレーサーとしての活用事例についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第一の目的である、研究対象地においてトレーサー試験を実施することができたこと、また第二の目的である汚染メカニズムの解明に資するデータを得ることができたことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断したい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で新しいトレーサーとして、コプロスタノールをそのまま利用することは、分析のための濃縮など、かなりの手間が必要であることが分かり、あまり現実的ではなかったので、今年度は、まずトレーサー試験体制を整えることを主目的として低濃度の塩水を用いた試験を実施した。当初は2つの観測孔を、トレーサー投入孔と観測孔として用いる予定であったが、観測孔側からのトレーサーの検出ができず、投入孔だけを用いたポイントダイリューション法による試験を実施した。本研究は、最終的には研究対象地の地下水汚染メカニズムを解明し、適切な対策方法を提案することと考えているので、通常のトレーサー試験方法に拘らない方法を今後検討していく予定である。まずは、観測孔を用いた深度方向のサンプリングを行い、分析を行いたいと考えている。そこで深度方向の硝酸態窒素濃度とコプロスタノール濃度の対応関係を調べるなど、コプロスタノールのトレーサーとしての活用方法を検討したい。また初年度に掘削した観測孔の一つにオートサンプラーを設置し、1日1回のサンプリングを行うこと、また地下水位、地下水中の電気伝導度の連続観測を実施することを考えている。さらに、気象観測装置も設置し、降水量、風向・風速、日射量、温湿度等の連続観測を行い、得られたデータにより地下水涵養モデルを構築し、地下水位や硝酸態窒素濃度の変動との関係を調べて、地下水汚染メカニズムの解明に取り組みたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に備品として購入したイオンクロマトグラフィーのオートサンプラーを他の科学研究費補助金と按分して購入したため、今年度に持ち越した助成金が生じていた。その分に相当する額に近い額が持ち越された形である。また、初年度の観測孔設置にかかる時間的な遅れのため、トレーサー試験の実施も今年度初めて実施することとなったことと、研究対象地におけるサンプリングとトレーサー試験の実施には、所属する部局の保有する公用車を申請者自らが運転して現地へ赴き、試験も行うなどしたため、その分の人件費・謝金が節約されたことも理由の一つである。 初年度および今年度に実施できなかった観測孔を用いた深度方向のサンプリングと分析、研究対象地域で実施している定期サンプリングと分析には、保有している分析機器を高頻度で使用していく必要がある。またイオンクロマトグラフィーの交換カラムや現地調査用の機器のセンサー部の交換など高額な消耗品の交換の時期に来ている。本研究は研究期間を5年間としており、次年度以降の交付予定額は800000円/年となっているが、これだけでは不十分であるところ、生じた次年度使用額を有効に活用し、高額な分析機器の消耗品の購入に充てたいと考えている。また研究成果の国内外での公表もすすめていくため、旅費にも充てる予定である。
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