研究概要 |
要素研究Aについては,結氷時の河川津波の水理実験を実施し,圧力伝搬速度と圧力減衰について検討を行った.完全結氷時の河川津波について,津波の第一波では圧力の上昇が抑えられるが非常に速い速度で圧力が伝搬し,ある地点で圧力解放が発生し,河氷が破壊され河氷は水面を浮遊する状態となる.第二波以降で,河氷のサイズが小さくなるに伴い,圧力の伝搬速度は遅くなるが,圧力の上昇および分散波列は開水時と同等の現象となり,さらに漂流物としての河氷が圧力の上昇とともに流動することが推察された.河川結氷時の河川津波対策においては,第二波以降に特に着目して検討する必要があることを示している. 要素研究B-1については,2011年東北地方太平洋沖地震津波によって氷板破壊が確認された鵡川の調査写真を用いて,画像解析に基づく氷板サイズの計測を行いヒストグラムで整理した.河口から2.7kmの地点では,3.0~6.0mのサイズが多く存在し最大で30mの氷板が存在した.樋門の吐口水路(水面幅は約13m)の氷板では,2.0~3.0,5.0~6.0,7.0~8.0と3つのピークを持つ分布となった.場所により氷板サイズの分布が異なることが明らかとなった.また,画像解析と調査データを用いて氷板の質量を推定し,河川津波による滞留氷板の質量は,鵡川橋周辺で約1t~20t,最大では5t~170tと推定された. 要素研究B-2については,津波とともに輸送される氷塊の構造物への衝突を想定した氷塊の破壊挙動や構造物へ及ぼす衝突・動的荷重について検討した.そのため,既往研究に加え,中規模程度の自由落下方式による人工海氷の衝突実験(最大衝突速度:8m/s)を様々な条件で実施した.さらに,脆性材料である氷を3次元のDEM(個別要素法)で,構造物をFEM(有限要素法)でそれぞれモデル化し,衝突荷重や脆性的破壊挙動を概ね再現できる基礎的なツールを構築した.これより,津波および氷板群衝突・集積を考慮した河川構造物等の施設配置検討や構造設計等に資するツールを獲得できる明るい見通しを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,水理模型実験の実施により本研究の実質的な目的であるタスク1,2,3に向けた要素研究Aおよび要素研究B-1,B-2としての知見が得られた.この知見と平成25年度に引き続き行う予定である各要素研究の解析の実施により平成25年度中盤には,予定通りタスク1,2,3の検討に取り組むことが可能となっている.
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