研究概要 |
現地観測については,2012年7月に2度にわたり発生した九州北部豪雨災害に伴う大量の流木・塵芥の海域への流出が起こり,観測船として傭船する予定であった漁船が出航出来ない事態が発生した関係上,本研究の焦点である夏季成層期をねらった観測を実施できなかった.幸いなことに,国が計画している諫早湾締切堤排水門の開門調査が,周辺4県などの関係機関との調整の遅れから,平成25年12月の判決により指定された期限ギリギリになる見込みであることから,平成25年度に現地調査を行うことで,十分な調査を実施できると考えられる.一方で,有明海に連結する八代海については災害の影響が無かったため,代替となる調査を行い,バロクリニックな流れによる物質輸送について調べた. 次に,数値シミュレーションについては,汎用型沿岸域流動モデルであるDelft3Dにより開発済みの有明海-八代海結合3次元流動モデルを用いて,長期的なバロクリニック計算を試みた.具体的には,2001年,2003年~2007年の計6年間について河川起源の淡水流入による塩淡成層の再現計算を行った.さらに,過去の研究から2006年の平水時と出水時(ピーク流量4,000m^3/s規模)において実施された筑後川起源淡水の挙動に関する浮遊ブイによる観測結果についての再現計算を試みた.その結果,開発したモデルにより諫早湾内で国が観測した塩淡成層の連続データの再現性が非常に優れていること,さらに筑後川から流入した淡水の動態についてもおおむね正確に再現されたことから,本モデルの有効性が明らかとなった.今後は,このモデルにより精緻な条件設定を加えていくことで,更に再現性の向上を図りたい.
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今後の研究の推進方策 |
まず,平成25年度は前年度に実施できなかった部分を補完するため現地観測を重点的に行う計画を立てている.特に,出水期である6月から7月において重点的な現地観測を行う計画とした.数値モデルについては,計画通り順調に開発が進んでいることから,現地観測の再現計算を行うことを主眼にした計画を立てた.
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