研究課題/領域番号 |
24360204
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
久保田 尚 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80205145)
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研究分担者 |
松本 正生 埼玉大学, 教育機構 社会調査研究センター, 教授 (00240698)
森本 章倫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30239686)
羽鳥 剛史 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (30422992)
小嶋 文 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (40637998)
藤井 聡 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80252469)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 交通計画 / サイレント層 / 社会調査 / パーソントリップ調査 / 物語 / ソーシャルキャピタル |
研究実績の概要 |
サブチームⅠでは,交通計画における住民の意見表明には,個人が多数派,少数派であること以外に,計画への賛否が関わっていること,及び,参加態度に個人の性質が関係することを検証した.WEB調査において,仮想的な交通計画と賛否の状況を設定した結果,多数派であっても賛成意見を持つ場合には,サイレント層になる傾向があることなどが分かった.さらに,AR(拡張現実)を用いた市民PRの効果と市民意識の変化を検証するために調査を実施した.具体的には,宇都宮の実際の景観上にLRTの車体CGなどを重ねて表示するコンテンツを作成し,AR体験前後でアンケート調査を実施した.その結果,ARはLRTの車体などの具体的なイメージを醸成する効果とまちづくりへの興味を向上させる効果があることを確認した. サブチームⅡでは,地域住民の発言行動の持続可能性の観点から,愛媛県内約600名の住民を対象に,市民活動への参加実態や活動期間,及び地域愛着やソーシャルキャピタルに関わる諸指標について調査を行い,地域住民の発言行動の持続可能性に寄与する要因を明らかにすると共に,地域のソーシャルキャピタルを基盤として,住民の発言行動を促進するための方策について検討した. サブチームⅢでは,最終年度である本年度は,前年度に作成した東海・南海・東南海地震の津波想定地域での防災まちづくりに資する「物語」の効果を検証することを目的として,「物語」の内容をさらにブラッシュアップし,インタビュー調査によるシナリオ実験を行い,その効果を定量的に分析した. サブチームⅣでは,複数の回答方法を組み合わせるミックスモード調査手法について,海外の先進事例等を踏まえて試行調査を実施し,PT調査への適用可能性について検証を行った.その結果,最も回収率が高い郵送調査を基本としつつ,WEB調査を補完的に実施する手法が有効であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブチームⅠでは,2点の研究目的を設定した.1つは,日本版沈黙の螺旋理論の検証であり,多数派であっても賛成意見を持つ場合には,サイレント層になる傾向があることなどが分かったことから,当初の目的はおおむね達成された.もう一方の研究目的は,VR技術を用いて各種施策の議論への参加促進効果を検証することである.既往研究では,CGを用いた市民PRは,施策への理解度と興味が向上することがわかっており, ARも同様の効果があることが確認できた.以上から,当初の目的は概ね達成されたと考える. サブチームⅡでは,3ヵ年の研究を通じて,地域住民の当該地域の諸問題に対する離脱行動や発言行動に関して,その規定要因や心的プロセスについて検討を行い,地域愛着やソーシャルキャピタル等の役割について明らかにすることができ,一定の成果を挙げることが出来た.また,地域住民の離脱を抑制し,発言を促進するための具体的な方策についても実験的に検討し,地域活性化に資する知見を得ることが出来た. サブチームⅢでは,交通政策における「物語」の活用に向けた実践研究として,東日本大震災の被災地域,及び,高知県黒潮町の津波防災行政に関する物語描写,それに基づく交通政策全般への意識,政策立案過程の参加意識等の変容の過程の解釈を通じて,同様の施策展開を行う他地域の行政や実務者が参照できる指針の基礎を構築できた. サブチームⅣでは,複数モードを融合したPT調査のサイレント層の特性を試行調査を通じて把握した.複数モードを融合したPT調査の回収率及び精度向上の方策として,郵送調査を基本とし,WEB調査の補完的な実施,事後的な確認による未回答の修正が有効であることを確認した.質的調査と量的調査の精度比較では,簡易調査票(量的調査用)を用いる等により,詳細調査票(質的調査用)の2倍程度の回収率を獲得できる可能性が示された.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,3ヵ年で得られた成果のアウトリーチ活動を行うとともに,学会等の場で発表を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度中旬にアンケート調査を行い分析結果の発表をする予定であったが、調査日時が協力団体の関係で遅れたため、計画を変更し、分析作業を年度後半に行った。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、分析結果の学会発表を2015年6月6日~7日の土木計画学春大会の企画セッション「沈黙の交通計画」で発表するため、未使用額はその経費にあてることにしたい。
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