本研究は、東京圏への一極集中と高齢化の進行の実態を把握し、少子高齢化社会が都市鉄道に及ぼす影響を定量的に分析し、その対応策を提案することを目的として実施した。26年度の研究成果は以下の通りである。 第1に、政府による東京圏の人口予測値が20年以上に渡り過小推計が続いていることとその原因を明らかにし、今後も予測より人口増加が長く続く可能性が高いことを示した。 第2に、今まで指摘されてこなかった、鉄道沿線ごとの高齢化格差に着目し、東京から西方面の路線沿線では、若い世代と高齢層の移動により世代混在型地域が保たれているのに対し、東および北方面の路線沿線では人口ピラミッドが同形のまま高齢化方向に移動し続けていることを示した。路線間格差は、都心に近い駅周辺ではなく、山手線から10~15km以遠の地区で顕著である。 第3に、特色のある田園都市線、中央線、伊勢崎線の沿線居住者に対する調査を実施し、その分析から、上記の沿線格差の原因として、路線ブランドにかかわる沿線魅力要因が居住地選択に大きく影響していることが明らかとなった。 第4に、東京都への全国各府県からの転入超過は若年層だけで、他の年齢層は転出超過となっていること、関西圏だけからは全ての世代が東京へ流出していること、また東京への流入量が多いのは地方中枢都市からで、続いて地方中核都市(県庁所在都市など)からであり、小さな市町村からからの一極集中ではないことなどを示した。このことは、地域創生策として実施中の市町村活性化施策に対し、重要な知見であり、その見直しの必要性を示唆している。 第5に、居住地選択モデルを構成し、また、自治体および鉄道事業者による若年層の誘致策を分析し、大学の立地、住宅開発、都市再開発、商業施設、住宅の住み替え促進事業などが、少子高齢化社会に対して都市鉄道事業がサステイナブルであるための重要な要因であることを示した。
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