研究概要 |
当該年度の研究内容:本研究では、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震を取り上げ、その経済的被害を推計する。経済被害は直接的な震災被害のみならず、サプライチェーンの寸断による被害の拡大がある。今年度はとうほくちほうの経済被害を家計に及ぼす被害と企業における被害を区別して推計を行った。震災による家計の被害や生産活動の減退は電力消費量の減少から間接的に推計された。東北地方の経済被害に端を発し、全国に拡大した経済被害の波及は地域間産業連関分析によって推計された。日本全国の産業の生産基盤の被害とそれに伴う消費の減退は分離して推計された。分析の結果の概要を記す。電力需要量基準で行った家計消費減少による経済被害は約1兆6,875億円である。一方、産業被災による生産活動の低下を原因とする業務用電力需要の減少率を基準として経済被害を推計した。この被害は4兆9,758億円と推計され、家計被害と合わせると全国の経済被害は6.7兆円に達したことになる。これは日本の年間生産額1,440兆円の約0.5%に相当する。さらに、推計した経済被害額に付加価値率をかけることで、最終需要が誘発する付加価値被害額の推計を行った。家計被災による付加価値の被害額は全産業で約9,785億円、産業被災による付加価値の被害額は全産業で約2兆4,118億円と推計した。今回の推計により地域ごとの被害波及の特徴、被害の大きさを分析することができた。 当該研究の意義:内閣府を中心とした国の行政機関は建物や道路・港湾などの物理的被害額を計測し、16兆9,000億円と推計している。しかし、停電や交通施設被害による産業活動の停滞、更には東北の産業に部品などを頼る産業に及ぶ間接被害については未だに推計がなされていない。本研究はこうした間接経済被害の推計するものであり、大震災の被害の全貌を知るためには不可欠な研究である。
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