研究実績の概要 |
本研究では、東日本大震災の間接経済的影響を生産基盤の被害と家計の消費の減退に分けて推計した。家計消費減少による生産被害は約1.7兆円、産業被災による生産活動の低下による生産被害は約5兆円と推計され、合わせると生産被害は約6.7兆円に達したことになる。また、産業被災による(サプライチェーンの下流)前方連関効果の生産被害額は約6.6兆円で、後方連関効果と合計すると約13.3兆円になった。次に、家計被災による付加価値被害額は全産業で約9,800億円、産業被災による付加価値被害額は全産業で約2.4兆円と推計した。さらに、前方連関効果による付加価値被害額は全産業で約3.5兆円となり、後方連関効果よりも約47%大きくなっていることが分かった。本研究で推計された間接被害の付加価値被害額は合計約6.9兆円となり、直接被害額の約40%と推定された。 地域別の分析については以下の通り。関東地域は東北地域との深い関係から、広範な産業に被害が表れている。中部地域では、自動車部品産業の被害が後方・前方連関効果ともに大きかった。これは、東北地域と中部地域の自動車産業の関係が密接であり、さらに後方連関効果の方の被害が大きかったのは自動車産業部品を中部地域からの供給に頼っていたことが主因である。次に、九州地域でも自動車産業の被害が大きかったが、特に前方連関効果の方の被害額が大きかったことが特徴的であった。これは東北地域から九州地域に対して自動車産業部品を供給していることが被害額として表れている。すなわち、地域間産業連関表の供給金額を見ることにより、東北地域が需給の両面において全国の自動車産業の一部となっていることが分かった。本研究では、東北地域にある産業や家計の被害が全国の産業に与えた影響を定量的に明らかにした。結果から、例えば東北と九州の自動車産業のつながりなど、気づきにくい産業連関構造が明らかとなった
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