研究課題/領域番号 |
24360213
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 典之 東京大学, 環境安全研究センター, 准教授 (30292890)
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研究分担者 |
春日 郁朗 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (20431794)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重金属 / 水環境 / 生態毒性 / 錯形成 / 底生生物 |
研究概要 |
本申請研究の目的は、都市周辺の水域における重金属類の水生生物への毒性影響を想定して、溶存有機物との錯形成や複数の生物を介した移行特性、底質を含めた挙動について知見を得ることである。本年度の研究により得られた結果は以下のとおりである。 1.底層水環境中での汚染物質の移行と生物影響評価 底生端脚類のニホンドロソコエビを用いて、新規の非致死エンドポイントである摂食量の評価手法を検討した。短時間で計測可能な指標を目指し底質曝露開始1時間後に4.1μm蛍光ビーズを25mg/Lになるよう添加し、30分間ののち試験個体を回収して、体内のビーズ数を計数した。個体によるばらつきが大きく今後の更なる改善が必要であるが、ある程度の毒性傾向を検出することができた。さらにニホンドロソコエビの異なる塩分濃度下での試験法の検討を行い、毒性物質非存在下で5~35‰の範囲で致死率には統計的な有意差がないこと、摂食量については高塩分濃度(35‰)下で減少が認められることが分かった。 甲殻類への餌となる藻類の細胞内重金属類分布について、緑藻Scenedesmus acutusに異なる濃度の亜鉛・銅を投与して検討を行った。どちらの元素についても細胞内の超遠心分離による沈降画分の寄与が大きかったが、銅については細胞内の非沈降画分が亜鉛と比較して大きく、捕食者への食餌由来毒性影響に差異があることが推測される結果となった。 2.錯形成能特性評価 重金属の錯形成に関する特性評価にフーリエ変換質量分析計を利用するための分析条件の検討を行った。EDTAによる亜鉛の錯形成については、m/zピークのシフトを確認し、錯形成の状態を確認できた。一方、市販フミン酸に鉄と亜鉛を添加した系についても、錯形成前後のマススペクトルを比較したところ、錯形成によるピークシフトと推定される変化が観察された。今後は他の分析手法と併用することで、詳細な解析を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究項目のうち、底層水環境中での汚染物質の移行と生物影響評価については計画通り進捗し、一部は既に学会発表も行い、また論文投稿も進んでいる。錯形成能特性評価については、より新規性の高いフーリエ変換質量分析計の分析条件の検討に注力し着実に進展している。環境試料中溶存有機物の錯形成評価については既存のデータの再整理を行い、学術雑誌への掲載が決定している。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り進捗しており、特記すべき計画変更や課題はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、平成25年2月開催の国際会議(米国)での発表を想定して口頭発表申し込みをしていたがポスター発表での採択となったため、より成果発表に適した国際会議として平成25年6月開催の国際会議に投稿することに変更した。そのための旅費および会議参加登録費を平成25年度に繰り越すこととした(口頭発表での採択が決定済みである、それ以外については計画通り進捗しており、経費使用について変更はない。
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