研究概要 |
近年,琵琶湖などの湖沼において難分解性有機物の増加・蓄積が報告されるなど,水圏における有機物の環境動態やその生態系への影響に注目が集まっている。しかし,湖沼有機物の起源や水環境中における環境動態および機能・役割についてはほとんど明らかにされておらず,有機物に関する基盤情報が欠如している。また,有機物の物質循環過程は,光や温度などの物理化学的な条件のみならず,微生物群集(藻類、バクテリアなど)の支配を強く受ける非常に複雑な系である。本研究課題は,「安定同位体標識」および「環境オミクス手法」を組み合せた網羅的かつ系統的な解析により,琵琶湖流域における有機物の環境動態を分子レベルで解明するとともに,その生態影響を評価することで,流域圏における天然有機物(NOM)の機能・役割の解明を目指すものである。 平成24年度は、琵琶湖流域における物質収支,湖沼有機物の環境中運命・動態,安定同位体標識環境オミクス技術,湖沼有機物の生態影響(毒性)評価,等のそれぞれに関して,専門家へのヒアリングと併せて,関連分野で発表されている文献を調査して最新情報を収集するとともに,炭素物質収支把握のための総合的な水質調査の計画を立てて着手する。NaH13CO3(あるいは13CO2)および13C,15N,2H等で標識化された基質(13C6-グルコース等)を用いることにより,それぞれ藻類(光合成)由来の一次有機物およびバクテリア由来の代謝(分解)産物を安定同位体で標識化する手法の検討を行った。連携研究者などと密に連携しながらMSおよび多次元NMRを用いた環境オミクス手法の確立に向けた条件検討等を実施した。更に、一次生産者である藻類の光合成に着目した光合成阻害試験について、試験条件、試験生物等の実験的検討を実施して藻類光合成阻害試験法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
琵琶湖流域における物質収支,湖沼有機物の環境中運命・動態,安定同位体標識,環境オミクス技術,湖沼有機物の生態影響(毒性)評価,等のそれぞれに関して,専門家へのヒアリングと併せて,関連分野で発表されている文献を調査して最新情報を収集するとともに,総合的な水質調査への着手,標識化・解析手法の検討、藻類光合成阻害試験法の開発を行うなど,当初の研究計画のとおりおおむね順調に進展している。
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