研究課題/領域番号 |
24360221
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
植松 康 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60151833)
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研究分担者 |
ガヴァンスキ 江梨 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00608797)
奥田 泰雄 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 建築災害対策研究官 (70201994)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 建築物外装材 / 耐風設計 / 耐風性能評価 / 動風圧試験 / アセンブリ試験体 / 風洞実験 / 低層建築物 / 壁面 |
研究概要 |
低層建築物(住宅、倉庫等)の外壁について適切な耐風圧性能の評価手法を確立するため、以下の項目を実施した。 (1)ハイブリッド型実変動風圧シミュレータの製作と基本性能の把握 平成24年度に着手したハイブリッド型実変動風圧シミュレータを完成させ、性能試験を行った。様々な圧力レベルと周波数のサイン波を入力し、圧力箱に再現した圧力(出力)との比較によって、載荷システム全体の動的応答性能を把握した。その結果、通常の設計で想定するレベルの強風中に置かれた低層建築物壁面に作用する変動風圧の振幅範囲(5kPa程度まで)と周波数範囲(5Hz程度まで)については、ほぼ正しく再現できることが分かり、実変動風圧シミュレータに求められる基本性能を有していることを確認した。さらに、風洞実験で得られた不規則な変動風圧に対しても、ほほ忠実に再現できることを、入出力のクロススペクトル解析により確認した。 (2)耐風圧試験による金属サイディングの破壊性状の把握 わが国で一般的に用いられる壁面として金属サイディングを対象とし、約2m×2mのアセンブリ試験体(外装仕上材だけでなく胴縁等の下地材も再現した試験体)を用いて破壊するまで載荷試験を行った。載荷した圧力はステップ状の漸増圧力と不規則な変動風圧の2種類である。荷重を徐々に増大させ、試験体の変形を測定し、破壊に至るまでの挙動を測定した。破壊モードとしては、サイディングを留めているビスの支持材からの抜け、ならびに、サイディングの頭抜けの2つがあり、各破壊モードに応じて破壊荷重が異なることを示した。また、漸増荷重の場合には脆性的な破壊となるが、変動風圧の場合には必ずしも最大ピーク値で破壊するのではないという破壊性状の違いを明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度にはハイブリッド型実変動風圧シミュレータの制御プログラム作成を依頼した米国技術者の来日スケジュールが合わず、必ずしも予定通りに進まなかったが、平成25年5月に来日が実現し、制御プログラムを含め、ハード・ソフト両面でシミュレータが完成した。そのシミュレータの性能試験を行い、計画通りの性能を有していることを確認した。その上で、低層建築物の壁面としてよく用いられる金属サイディングを試験体として選択し、実際の施工方法と同じ要領でアセンブリ試験体を6体作製して載荷試験を行い、破壊するまでの挙動と破壊モードを測定した。試験体にばらつきがあるので、さらに数多くの試験体を用いた実験が必要になるが、ルーチン的に試験を行うことのできる準備が整った。 平成24年度の遅れを取り戻し、平成25年度には当初計画通りの研究を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、まず金属サイディングを対象として、統計処理に耐えられるだけの試験体数の実験を行う。破壊に至るまでの挙動を明らかにすることで、設計上設定すべき限界状態、すなわち「使用限界」、「損傷限界状態」、「安全限界状態」を明確に定義する。 引き続き、窯業系サイディングについても同様の試験を行い、材料特性と破壊性状の関連、金属系サイディングとの違いを明らかにする。 金属系および窯業系サイディングそれぞれについて、外壁システムを構成する部材や接合部を対象とした要素試験もあわせて行い、アセンブリ試験体を用いた試験結果との違いを明確にするとともに、要素試験を組み合わせることで実際の壁面システムの耐力を簡便に評価する方法を提案する。これによって、外壁システムの簡便で合理的な耐風性能評価手法を確立する。 研究成果を日本風工学会論文集や材料・風工学関連の国内・国際会議で発表し、研究成果の普及を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、金属系サイディングを対象とし、アセンブリ試験体を用いた載荷・破壊試験を行った。これは、試験方法を検証するための予備試験であり、試験体は限られている。試験体材料のうちサイディングはあるメーカーから提供して貰ったため、当初予定していた試験体材料費が残ったものである。 平成26年度は多数の試験体を用いた載荷試験を行う予定である。昨年度は試験体の一部をメーカーから提供して貰ったが、本年度は購入しなければならない。昨年度繰り越した研究費は試験体材料費に充てる。
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