既存低強度RC架構とPCアウトフレーム,及びこれらを実際の耐震補強に近い形で接合した1/2.5スケール試験体に,同履歴の正負交番繰り返し漸増水平力載荷実験を昨年度実施した。既存RC試験体に対しては,外付け耐震補強する際の最低コンクリート圧縮強度13.5MPaに近い14MPaと,極端に低強度の5.0MPaを用意した。 実験で得られた低強度RC架構のせん断終局強度と,既存RC架構の耐震診断に用いられる評価式の対応を確認した。コンクリート圧縮強度が14MPaの試験体に対して実験結果と評価式では良好な対応が見られた。5.0MPaの試験体に対しては評価式が実験値よりも大きな値となり,危険側に評価する結果となった。これは,せん断力を受けるRC部材において圧縮強度が極端に低いコンクリートでは,鉄筋との付着強度が小さく,せん断補強筋の効きが悪くなることが影響していると考えられる。そこで,耐震診断に用いられる評価式でせん断補強筋の強度にコンクリート圧縮強度に応じた上限を設定することで,強度が極端に低いコンクリートに適用することを試みた。その結果,5.0MPaの試験体に対して評価式が下方修正され,実験値と良好な対応が得られた。 PCアウトフレームにはPC圧着関節工法を用いた。この工法を用いることで,水平力に対する損傷が圧着関節部に集中する。そこで,圧着関節部にPC鋼材抜け出しを考慮した回転バネを設定することで,部材のモーメント‐回転角関係,及びフレーム全体のせん断力‐層間変形角関係の評価を試みた。その結果,中柱の柱脚部,及び中柱梁関節部では実験結果と良い対応を示した。外柱に対しては実験結果との差異がみられた。この原因として,柱部材の軸力変動を考慮出来ていないことが挙げられる。フレーム全体のせん断力‐層間変形角関係は概ね評価することが出来た。
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