研究課題/領域番号 |
24360236
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
相良 和伸 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30109285)
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研究分担者 |
甲谷 寿史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20243173)
北野 博亮 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80293801)
岩田 剛 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (20636542)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 蓄熱 / 温度成層 / ディフューザー / CFD / 実験 |
研究概要 |
本研究は、東日本大震災後の原子力発電所稼働抑制の中、喫緊の課題となっている日中の電力需要ピーク低減効果が大きい蓄熱式空調システムで用いられる温度成層型水蓄熱槽の極限性能を可能とするディフューザーを開発しようとするものである。この目的を達成するために、垂直吹出ディフューザーの基本性状の実験的検討として、様々な条件で水蓄熱システムの実験が可能な三重大学の実験設備を利用して、入力流量、温度条件、ディフューザー設置水深の違いによる温度成層の形成状況の検討を行うとともに、実際の蓄熱システムでの利用温度条件と流量レベルの実験を可能とするために実験設備の改造を行い、実際的な条件下での蓄熱性能の把握と得られた実験データを用いたCFDのより広範な条件での精度検証を実施した。その結果、CFDにおける乱流モデルとしては、RNGk-ε乱流モデルだけでは対応できない非常に遅い流れとなる条件では層流モデルが適切であることが明らかとなったが、乱流モデルでも実務的には安全側の性能評価となることを確認した。 CFDによる検討としては、ディフューザー吐出面に設けられるパンチングメタルのCFDモデル化の検討を行った後、ディフューザーと流入条件を様々に変化させた解析を実施することにより、既開発の簡易モデルである槽内混合モデルにおけるモデルパラメータの同定を行った。 性能評価の体系化の理論的検討としては、水平吹き出し方式のディフューザーについては蓄熱性能向上には限界があることを理論的に示して垂直吹き出し方式の優位性を確認するとともに、垂直吹き出し方式のディフューザーについて同定された槽内混合モデルのモデルパラメータと流入条件との関係を、アルキメデス数とディフューザー設置水深をパラメータとして予測できる可能性を示した。 そして、これら得られた結果を取りまとめて学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度までに予定していた研究のうち、実験的検討については、ディフューザー周辺の流速分布の計測と簡単な可視化実験により、垂直吹き出しディフューザーの特徴的な性状について把握するとともに、実験設備を改造することによって実システムに即した温度条件、流量条件での実験を実施したが、改造に時間がかかったためにディフューザーの形状については十分なバリエーションを実現することが出来なかった。次年度も引き続き、様々なディフューザーを試行することにより蓄熱性能の極限化を図ることとしている。 蓄放熱運転が逆転して、水面近傍に設置されたディフューザーの上面から水を吸い込む際に空気が混入して、運転に支障が出る可能性の検討については、本研究の初年度に基本的な理論的検討と確認のための簡単な条件でのCFDを実施しているが、その後、蓄熱槽規模、ディフューザーの形状・サイズ・設置水深、入力流量を変化させた条件で、合計300ケース以上の長時間計算が必要な非定常CFD解析を行う中で、空気混入の検討については、その後の具体的な進展が出来ず、次年度の主要課題としている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られた成果を基にして、以下の方策で研究に取り組む。 垂直吹出ディフューザーの実験的検討については、ディフューザーの形状、サイズ、設置水深のバリエーションをさらに増やした実験を行い、CFDの計算精度の検証条件範囲を広げるとともに、実用規模の蓄熱システムに適用可能な極限性能を持つディフューザーの検討を行う。 槽内混合モデルのパラメータ同定による蓄熱性能予測法の検討については、吹き出し直後の縮流と成長する密度噴流の理論的検討をさらに進め、浮力の影響下にある流れ場を支配するアルキメデス数などの無次元パラメータを活用することにより、垂直吹出ディフューザーを用いた場合の蓄熱性能を予測できる理論的根拠を検討する。 ディフューザーからの空気混入性状の検討については、特にリスクが高い吸込み開始直後について、計算負荷は大きいが空気と水を同時に解析できる混相流のCFDを重点的に行うこととしている。また、水理学的検討をふまえて、理論的な限界設置水深・流量の検討を行い、詳細測定実験および可視化実験により検証を行う。 垂直吹出・吸込ディフューザーの設計資料整備については、蓄熱システムの様々な運転条件から決まる無次元パラメータなどから槽内混合モデルのパラメータを推定する方法を検討し、温度成層型蓄熱槽における垂直吹出・吸込ディフューザーの最適設計資料として整備する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品購入の際の端数が残額として残った。 次年度において、物品購入に有効活用する予定である。
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