研究課題/領域番号 |
24360237
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古賀 靖子 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (60225399)
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研究分担者 |
高雄 元晴 東海大学, 情報理工学部, 教授 (90408013)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光環境 / 視覚 / 生体リズム / 固体照明 / 分光分布 / LED / 瞳孔反射 / 分光感度 |
研究実績の概要 |
光放射の非視覚的作用の分光感度について加法性を検討するため、混色光刺激による瞳孔反射のデータを収集した。光刺激量の混合比に関係なく、刺激応答曲線はほぼ同じで、劣加法性があると考える。これは、明るさ知覚の特性と類似する。また、照明環境と覚醒水準との関係を調べるため、ポストランチディップと呼ばれる昼食後の眠気に着目し、相関色温度の異なる白色光照明条件下で、注意や眠気の程度を評価した。その結果、波長の異なる単色光照明条件下で行った既往研究と同様に、長波長成分が多い低色温度光の覚醒喚起効果が示唆された。このことは、光放射による覚醒作用が、夜間について報告されているようなメラトニン分泌抑制だけで、必ずしも説明されないことを意味する。 光放射の視覚的作用について、特定の波長成分を除いた白色光に対するグレア評価実験を行った。錐体と杆体の両方が働いている薄明視状態では、従来グレア感に影響する基本要素とされてきたものと異なる傾向が観察された。 動物において光放射の非視覚的・視覚的作用を評価するために、剥離網膜標本から網膜電図の記録を試みた。視細胞における光受容を物理的にブロックすると共に、各種ブロッカーカクテルによって薬理学的に網膜内の神経伝達物質を阻害した。一方、容積伝導を低減した特殊な記録電極を新たに開発し、局所神経回路内の網膜電図を記録できるようにした。その結果、非視覚的作用に係わる光感受性網膜神経節細胞の応答を反映していると考える波形成分の記録に成功した。この網膜電図は、視感度特性、フリッカ光に対する応答特性、薬理学的性質の点で、光感受性網膜神経節細胞のものと非常に似ていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光放射の非視覚的作用の分光感度を、ヒトについて瞳孔反射測定より求めたが、関連する他の研究報告から、測定または解析の方法の見直しが必要であることが判明した。動物実験による研究は、概ね予定通り進んでいる。光放射の非視覚的作用について、網膜電図による記録・評価手法を発案したことは、当初の研究計画より進んだ成果である。光放射の視覚的作用に関する研究も、概ね予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
瞳孔反射に関する網膜の光受容と光情報伝達の機能について再考する。光放射の非視覚的作用における劣加法性を検討するため、混色光刺激に関するデータを蓄積する。網膜電図は、ヒトでも非侵襲的に記録可能であり、この研究を推進することで、ヒトの光感受性網膜神経節細胞の生理学的特性を、直接的に短時間で記録・評価できる可能性がある。今後、この研究を推進する一方で、光放射の非視覚的作用の行動学的研究を行う。特に、マウスの発声行動を指標にした情動反応について研究を開始する。
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