研究課題/領域番号 |
24360254
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
増田 達男 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (70125095)
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研究分担者 |
永野 紳一郎 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (40329371)
石見 達也 国土技術政策研総合研究所, 総合技術政策研究センター, 主任研究官 (20370744)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 津波 / 大規模火災 / 予測手法 / 海上火災 / 瓦礫 / 地形 / 実験 |
研究概要 |
東日本大震災において津波火災の甚大な被害を受けた気仙沼市を中心に調査報告書およびインターネットの動画等の公開情報を収集した。その結果、地震当日から4日間における時系列での津波火災の経緯について概要をとらえることができた。公開情報で確認できなかった詳細については、平成24年8月と10月の2回に分け、延べ6日間にわたり気仙沼市の現地調査を実施した。現地調査の内容は、被災地の状況および地形の観察、公的機関および居住者への聞き取りである。前者の観察調査は主要な被災範囲の全域をめぐることができた。後者の訪問聞き取り調査を行った対象公的機関は、気仙沼消防本部、気仙沼消防署、宮城県気仙沼合同庁舎、気仙沼市役所、気仙沼公民館、浦島小学校、ケアハウスみなみ、である。被災地の居住者への聞き取りは、大浦地区、小々汐地区、唐桑津本地区の各1名である。 以上の情報収集および現地調査の結果、以下の点を明らかにすることができた。(1).第一波の津波の先端では油はまだ浮いていなかった。(2).しかし早い段階で漁業用の石油タンクの倒壊によって流出した油が海面に広がった、と推察される。(3).津波によって市街地の大部分を占めた木造家屋がことごとく瓦礫化し、この瓦礫が陸上で堆積することによって市街地火災が発生した。(4).一方、海上では漂流瓦礫と油の混合状態で海上火災が発生し、上げ潮で移流してライン状に伸長した。この伸長した海上火災が湾を横断して対岸に達し、さらに引き潮によって湾内に広がり陸上火災を助長した。(5).湾の流動および瓦礫の運搬・堆積を再現する実験において必要最小限の地形範囲を設定することができた。 この流動・運搬・堆積の実験については、気仙沼市の陸上および海底地形を国土地理院から入手しており、地形の適正縮尺を数値計算によって確認中である。また、上記のように海上火災が陸上の延焼を助長していることから、海上火災の実験を進めている。これには、4m×4m×1mの鉄製水槽を作成し、重油と木片を水面に浮かべ大型風洞で風を送り燃焼速度および燃焼温度を測定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、公開情報の収集によって、実験に必要な津波火災の概要をとらえられると予測していたが、実際には、現地での調査を前倒しにして実施する必要性が生じることとなった。したがって、現地調査を1年早めたことになる。一方、海面流動実験は、津波火災の実態と必要な地形範囲を、現地での調査を踏まえて進める必要があり、その分遅れたことになる。海上火災の実験は、おおむね予定どおり開始し、進めている。
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今後の研究の推進方策 |
海面流動実験および海上火災実験により、津波火災の再現に必要なパラメータの計測を進める。一方で、津波火災の経緯を論理的にシナリオとしてまとめる。以上をふまえて、数値計算により津波火災を再現する。再現性の微調整を行い、津波火災の予測手法を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては現地調査を1年早めたため予定外の経費を支出した点と、海上火災実験が進み、経費の追加が必要となる事態も考えられたので、前倒し支払請求を行った。しかし、結果として当初予算内に収まった。また、専門技術の外注分が平成24年度内に完成しなかったので未払いだが、平成25年度前半に処理する予定である。
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