研究課題/領域番号 |
24360254
|
研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
増田 達男 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (70125095)
|
研究分担者 |
永野 紳一郎 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (40329371)
岩見 達也 国土技術政策総合研究所, 総合技術政策研究センター, 主任研究官 (20370744)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 津波火災 / 東日本大震災 / 造波水槽実験 / 流況 / 瓦礫 / 海上火災実験 / 津波数値計算 / 写真測量 |
研究概要 |
本年度は主に、①造波装置を備えた大型水槽での実験、②実物大風洞による大型水槽での火災実験、③津波の数値計算シミュレーション、④市街地火災シミュレーション用の地理情報および建築群の写真測量、を行った。 ①の実験では、気仙沼湾と沿岸市街地の縮尺地形(高さ方向1/100、水平方向1/300の歪縮尺を採用)を大型水槽内に5m×10m×1mの規模で制作した。造波装置で最大波高9cm(原寸では9m)の人工津波を発生させ、津波の流況と模擬瓦礫(4mm立法の木片粒)の移動・堆積等を記録・測定した。その結果、人工津波が朝日埠頭に遡上して、平野部において瓦礫がことごとく押し流される現象、岬に衝突した人工津波が大きく方向を変化させる現象、岬の先端付近で大きな渦が発生する現象、引き波後に陸上に瓦礫が堆積する現象、引き波によって湾内へ瓦礫が引き込まれて漂流する現象等を確認した。②の実験では、2.5m×2.5m×1mの鉄製水槽に重油と瓦礫木材を浮かべて着火し、燃焼状態を記録・測定した。その結果、水面の重油に火が着くと激しく燃焼する点、2m/sec.以上の風速によって海上火災が発生する点等が明らかとなった。③の津波数値計算では、津波が朝日埠頭から北へ連なる市街地の全体へ遡上し、湾を北上して湾内に大きな水平渦が発生させ、3.11で最も津波火災が広域に渡った湾北の鹿折市街地に遡上し、その後引き波現象に至るまでの一連の経緯が再現され、①の造波水槽実験結果とも比較検証することができた。④は気仙沼市における湾と沿岸市街地のGIS(地理情報システム)データを国土地理院から入手するとともに、現地において家屋等の建築群について高さと開口部寸法を写真測量によって記録した。 以上によって、津波火災の全体像を定量的に把握するとともに、最終の平成26年度において予測手法を構築するための準備を整えることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、公開情報の収集によって、実験に必要な津波火災の情報を十分収集できると予測していたが、実際には、現地での調査を前倒しにして実施する必要性が生じた。したがって、現地調査を1年早めたことになる。一方、海面流動実験は、津波火災の実態と必要な地形範囲を、現地での調査を踏まえて進める必要があり、その分遅れたことになる。海上火災の実験は、おおむね予定どおり開始した。 今年度(2年目)は、海面流動実験および海上火災実験を推進するとともに、津波の数値計算を実施した。さらに火災シミュレーション用の地理情報入手と現地での写真測量を実施した。 以上の結果、最終年度(3年目)の「予測手法の構築」に向けて準備がおおむね整った。
|
今後の研究の推進方策 |
予測手法の構築が課題であり、すでに数値計算により津波の予測手法を確立しているので、津波火災を予測するため、シナリオに沿って各パラメータの解析数値を計算し、津波火災を再現するとともに、実際の津波火災と照合して補正する。 次に津波火災をきっかけとする市街地火災のシミュレーションを実施する。これにはすでに収集済みである地理情報と写真測量による建物3次元データを使用する。 以上を体系化して津波火災の予測手法をまとめる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者の増田達男はほぼ予定どおりに経費を使用したが、実験用の経費に多少の余裕が生じた。 研究分担者の永野紳一郎は、高額な測定機器の購入計画にゆとりをもたせたため、次年度使用額が生じた。 研究分担者の岩見達也は、火災シミュレーションのソフトウェア選定に際して、予定よりも少額に収まったため、次年度使用額が生じた。 研究代表者の増田達男は、研究の進展に応じて新たに予測される経費とともに、次年度使用額を含めて適正に使用する。 研究分担者の永野紳一郎は、追加の海面流動実験に次年度使用額を使用する。 研究分担者の岩見達也は、次年度使用額を含めて予測システムの構築に使用する。
|