平成25年度においては、次の2点を中心に研究を実施した。 1)東アジアの宮殿建築における儀式の比較研究。 元服をテーマに日本・中国・朝鮮・ベトナムの宮殿において、その儀式が具体的にどのように行われたかを、文献史料の内容を比較研究することで、検討した。ベトナムでは元服の儀式がないこと、日本でのみ天皇(皇帝・王)の元服の儀式が行われたことが確認された。また、東宮元服の儀式では、日本においてのみ天皇が参加し、天皇の御殿である紫宸殿で行われること、座の向きについて日本と中国(唐)・朝鮮では異なること、その他様々な違いが明らかにされた。これらの点については、研究成果報告書としてまとめた。 2)日本・沖縄の比較研究。 前年度に鹿児島県下の民家を調査し、建築の計画手法において、二つの方法が確認されることを知った。つまり、柱間を心々で計画する手法から、疊割りで計画する手法に変化することが鹿児島県下の民家の実測によってわかった。そこで、本年は奄美大島・沖縄・石垣島に調査対象を広げることによって、疊割りの手法がどのように、どこまで広がったかを検討しようと考えた。結論を述べると、奄美大島では明治期の民家において疊割りが確認されるが、沖縄本島や石垣島では疊割りであることを確認できる民家はなかった。逆に、沖縄・石垣島の民家では柱間心々で計画されたと考えることも適切ではないことがわかった。ある程度幅を持って計画されているとしか判断できなかった。この事を承け、九州で最も古い民家とされる福岡県の横大路を調査したところ、ここでも柱間心々でも疊割りでもない寸法が確認できた。日本建築・民家の特色である正確な寸法体系がどのように民家の中に広がっていくのかを今後検討する必要がある。
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