研究課題/領域番号 |
24360261
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
北上 修 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70250834)
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研究分担者 |
岡本 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10292278)
菊池 伸明 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80436170)
島津 武仁 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 教授 (50206182)
柳原 美廣 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40174552)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 永久磁石 / NdFeB / ナノコンポジット / 単一粒子 / 磁化反転 |
研究概要 |
本計画の最終目標は,ナノサイズNdFeB単結晶粒子の挙動を調べることにより磁化過程を解明し,NdFeB磁石の保磁力が理論値の10%程度にとどまる理由を明らかにすることである. 本年度は,昨年に引き続き上記目標達成に必要な基礎技術の確立を目指した.具体的には,NdFeB薄膜のエピタキシャル成長技術と微細加工技術の確立,さらにはNdFeB磁石粒子の磁化ダイナミクス計測に必要な大振幅高速パルス磁場発生装置の改良を試みた. エピタキシャル成長に関しては,従来のMgO(001)単結晶/Mo(001)バッファー上にNd中間層を介在させることにより,高品質なエピタキシャルNdFeB(001)薄膜を作製できることを見出した.またNdFeB薄膜の微小ドット加工に関しては,プロセスがNdFeBに与える加工ダメージを系統的に調べ,少なくともミクロンサイズ以上の領域においてその影響が無視しうるレベルにあることを明らかにした.一方,昨年度には異常ホール効果を利用したNdFeB単一ドットの超高感度磁化検出に成功し,並行してその磁化ダイナミクス計測に必要な大振幅高速パルス磁場発生技術を構築した.しかしその最大発生磁場は6kOe程度にとどまっていたが,ブルームラインと直列接続アバランシェトランジスタの組み合わせにより,NdFeBドットの磁化反転に必要な振幅10kOeのパルス磁場の発生に成功した.なおパルス磁場の立ち上がり時間もナノ秒レベルにまで短縮し,ナノ秒オーダーで起きる反転核生成,そしてその伝播を観測できる見通しが得られた. 次年度は,本年度までに築きあげた要素技術をベースに,NdFeB単一粒子の磁化挙動に関する研究を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するには,研究試料の作製(高品質単結晶薄膜と微小ドット作製)と新規な実験計測技術(ナノ秒オーダー大振幅高速パルス磁場発生装置,超高感度磁化検出システム)の構築が必須である.当初の計画通り,本年度までにこれらの基本要素技術を立ち上げることができ,本研究は全体として概ね順調に進展しているものと判断される.以上の検討に加え,本研究の過程において,NdFeBの磁化反転に関し重要な情報を与えると思われる新たなアプローチもスタートさせた.それは磁気粘性と動的保磁力の挙動を基に磁化反転過程を調べる試みで,本年度までに理論的定式化と実験方法の策定を終えることができた.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り計画を遂行する予定である。 本研究の第一の目的はNdFeB磁石の磁化反転機構を明らかにすることである.そのために当初の計画通り,新たに確立した高品質エピタキシャル薄膜成長技術そしてドット微細加工技術によりNdFeB単結晶ドットを作製し,独自に構築した単一ドット磁化ダイナミクス計測システム(高速大振幅パルス磁場発生装置と高感度磁化検出システム)により磁化反転ダイナミクスを明らかにする.この知見により,NdFeB永久磁石の保磁力が理論値(異方性磁場)に比べ約一桁低い原因を突きとめられる可能性がある. 本研究の第二の目的は,ナノコンポジット系の磁化反転ダイナミクスを明らかにすることであるが,上述の試料作製技術と磁化ダイナミクス計測システムを適用して検討を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に使用予定の単結晶基板とスパッタターゲットの納期が遅れたため. 納期が遅れた基板およびターゲットは年度早々に納入予定.本年度購入予定分と合わせて研究を行う予定.
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