研究課題/領域番号 |
24360262
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 薫 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30169924)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 準結晶 / 半導体物性 / 計算材料物性 / クラスター / 熱電変換材料 |
研究概要 |
本年度は、下記2つの研究目的について進展が得られた。 1)我々が発見して「擬ギャップ」を持つことを確かめた正10角形クラスターを持つBTiRu系近似結晶の熱電特性を明らかにする。 α相では、平均価電子数を変化させることで、擬ギャップ内でフェルミエネルギーをシフトさせ、電気伝導率とゼーベック係数を制御することに成功した。δ相とζ相は、α相と異なり、フリップサイト、RuとTiの混合サイト、大きな格子定数を持ち、熱伝導率が低下することが予想されたが、実際には低下せず、熱電性能指数は向上しなかった。この研究の過程で、第2相として存在したTi10Ru19B8結晶の単相を作製し、熱電性能を評価したところ、ZT=0.1という比較的大きい値を得た。ドーピング等により、さらなる向上が期待できる。 2)水素化Alのクラスターと、水素化Bクラスターを比較することにより、正20面体クラスターの特徴を明らかにする。 クラスターの軌道エネルギーの順番とWoods-Saxonポテンシャルにおけるそれを比較することにより、金属結合で安定なクラスターと、不安定なクラスターや共有結合のクラスターを区別できることが分かった。また、クラスターが安定か不安定かと、HOMO軌道が結合的か反結合的かに相関があることが分かった。これらにより、水素化していない場合、Alでは正20面体クラスターが安定であるのに対して、Bでは平面クラスターが安定である理由が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画にはなかった下記の2つの進展があったからである。 BTiRu系近似結晶の熱電特性を明らかにする過程で、予想外のTi10Ru19B8結晶が比較的高い熱電性能を持つことを発見した。 クラスターの軌道エネルギーの順番とWoods-Saxonポテンシャルにおけるそれを比較することにより、金属結合で安定なクラスターと、不安定なクラスターや共有結合のクラスターを区別できることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
明らかにしたAl系正20面体クラスター固体や正10角形クラスターを持つBTiRu系近似結晶、および新たに発見したTi10Ru19B8結晶の熱電特性をまとめて、投稿論文とする。 また、クラスター機能設計のための計算手法を確立する。具体的には、最局在ワニエ関数を用いて、RuGa2等のバンドギャップを持つ金属間化合物や、新たに発見した実在する近似結晶から出発してバンドギャップが出現したものの、ギャップの形成機構を明らかにし、バンドギャップを持った半導体準結晶創製への道筋を付ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ計画通り、使用することができたが、端数が残額として残った。 研究に必要な小額の物品を購入予定。
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