研究課題
本研究では、「蓄電池中の伝導原子の位置とその動き、そして母相構造の時間変化」を中性子散乱で明らかにすることを目的としている。本年度は全固体電池を目的とした超イオン伝導ガラス/準安定結晶(Li2S―P2S5系、Na2S-P2S5系、Li2S―P2S5―GeS2系そしてLi3xLa2/3-xTiO3系)の作製とそれらの中性子、X線回折実験を行い、リートベルト解析、PDF解析そしてリバースモンテカルロ法によるモデリングを行い、3次元構造を導出し、多面体解析により移動するLi原子の存在位置ならびに周りの多面体の形、歪みなどの構造変移を時系列で解析する。Na2S-P2S5系とLi2S―P2S5―GeS2系ではその試料作製に成功し、物性測定を行い、現在構造実験を行って解析中である。Li2S―P2S5系とLi3xLa2/3-xTiO3系に関しては回折実験、構造解析そしてモデリングを行い、Liイオンの移動形態や移動経路の解析を行った。例えばLi2S―P2S5系のガラスと準安定結晶の伝導度が一桁以上異なっている事を構造学的観点から解明し、BVS法を使ってLiイオンの移動分布の視覚化と伝導度との関係を得ることに成功した。そして、Li3xLa2/3-xTiO3系ではLiイオンの移動する分布を明らかにし、現在その論文を作成中である。
2: おおむね順調に進展している
研究は順調に予定通り進んでいる。Liイオンの存在位置の視覚化、そして伝導経路の視覚化の行う解析法の開発に成功し、実際のデータ解析を順次押し進めているところである。中性子回折装置(SPICA)も完成に近づいており、SPICAを使ったin-situ構造観察実験も開始する予定である。
全固体電池の開発に向けて、種々の固体電解質を作製するとともに、イオン伝導体のイオンの位置の視覚化ならびに伝導経路の視覚化を中性子散乱、X線回折の実験データを基にしたPDF解析、リバースモンテカルロ法によるモデリング、多面体解析、BVS法によって行う。In-situ実験から実際に動いている様子を観察すると共に、準弾性散乱によるイオン拡散の定量化も行う。さらに正極、負極材料でのイオンの位置ならびに伝導経路の視覚化も進める。
実験に集中したことと、国際会議での発表を計画していたが、今年は国内を重点的に発表したため、予定額を下回った。全固体電池を構成する材料の作製後の熱物性も昨年のDSC装置の購入により正確に測定できるようになり、構造変態を確認しつつ試料作製を進めている。今後の研究費は、系統的な材料作製、材料の物性測定のための消耗費の購入、そして中性子散乱や放射光X線回折による構造実験のための出張費、さらに、解析のためのコンピュータの購入、そして結果を学会や研究会で公表するための旅費などに使用していく計画である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 1件)
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