研究概要 |
・フラーレン(C60)-鉄(Fe)グラニュラー薄膜のトンネル磁気抵抗効果について、C60/Fe界面における伝導電子のスピン偏極率が低温ではFe結晶内より大きくなることを論文発表した(S. Sakai et al., Synthetic Metals 173. 22 (2013))。研究代表者らはこれまでに同様なスピン偏極率の増大がC60/Co界面においても生じることを明らかにしており(S. Sakai et al., Appl. Phys. Lett. 89, 113118 (2006), 91, 242104 (2007), Phys. Rev. B 83, 174422 (2011)他)、今回の成果は、このような界面のスピンフィルター性がC60/磁性金属界面に広く共通する性質であることを示すものと言える。 ・スピンフィルター性などフラーレン/磁性金属界面の物性の根源を明らかにするため、C60/Fe界面のスピン依存電子構造や磁気的状態を深さ分解X線磁気円二色性(XMCD)分光により探索した。その結果、C60/Fe界面にあるC60は、一部のC原子がFe原子と共有結合してπ-d混成による新たな電子状態が生成することや分子軌道のエネルギーに分布が生じることが分かった。界面のFe原子層についても、軌道モーメントの増大など結晶内部とは状態が異なることが分かった。現在、次年度中の論文発表を目指して理論面からの考察を進めている。なお、本研究で用いた深さ分解XMCD分光装置は、本科研費補助金の一部を用いて開発したものである。研究代表者らは本装置を用いることで、上記以外にもグラフェン/ニッケル界面のスピン物性の解明(Y. Matsumoto et al., J Mater. Chem. C 1, 5533 (2013))などの成果を得た。
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