研究課題/領域番号 |
24360267
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
滝沢 博胤 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90226960)
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研究分担者 |
林 大和 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60396455)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | セラミックス / 先端機能デバイス / 誘電体物性 / マイクロ波加熱 / 非平衡反応場 / マルチフェロイックス |
研究概要 |
本研究では、2価のスズを含む新物質創製と強誘電性・マルチフェロイック機能発現を目的としている。25年度は、マイクロ波選択加熱下での熱的非平衡反応メカニズムの解明を検討した。SnO-TiO2系では一酸化スズ(SnO)が選択的にマイクロ波を吸収し、高温に自己発熱する。一方、酸化チタン(TiO2)はマイクロ波吸収をほとんど示さないため、これらの混合物へのマイクロ波照射では、SnO成分の選択加熱が生じている。マイクロ波出力を調整することで、選択加熱下での温度上昇プロファイルを種々に設定した結果、2価のスズを含むSn2TiO4相は昇温速度の速いほど(マイクロ波出力の高いほど)生成しやすいことが明らかとなった。また、急速昇温によって600℃に到達した時点でマイクロ波照射を停止する方が目的試料合成には有効であり、600℃以上の温度で反応時間を増加させると、目的相は一部分解してゆくことが判明した。これらの結果は、2価のスズを含む目的相が非平衡反応条件下で生成する準安定相であることを示唆するものである。 原料系にシュウ酸塩や還元酸化チタン(TiO2-x)等を用いて、原料系の選択加熱の程度を変化させた実験と比較したところ、マイクロ波吸収特性に顕著な差を有する選択加熱系(マイクロ波吸収の強いSnOと吸収の弱いTiO2からなる系)ほど、2価のスズを含むSn2TiO4相を形成しやすいことが見いだされた。これらのことから、選択加熱下での反応メカニズムとして、高温に自己発熱した2価のスズ成分が、TiO2粒子に向かって一方向拡散することによって非平衡反応が進行してゆく様式が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の目標としていた、マイクロ波選択加熱下での非平衡反応メカニズムの解明が順調に進行し、当初の目標を達成することができた。また、このメカニズムの解明によって26年度の新規材料探索の方針(反応系の選択指針)が明瞭となり、次年度の研究計画が支障なく推進できることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
2価のスズを含む新物質創製と強誘電性・マルチフェロイック機能発現を目的に、以下の項目に関する研究を推進する。 ・SnOを反応系成分とするSn2+含有新規複酸化物の創出 ・選択加熱系における非平衡反応メカニズム解明の継続 ・構成成分の選択による強誘電性・マルチフェロイック機能発現 26年度は最終年度にあたるため、以上の研究結果を総括し、異常原子価Sn2+を含む新規機能材料を創出するとともに、非平衡反応場プロセッシングとしてのマイクロ波プロセッシングを総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額と合わせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。また、平成26年度にはマイクロ波照射下での非平衡反応を議論する国際シンポジウムが開催されることとなったため、成果発表のための経費を確保した。 新材料系での合成実験にための高純度薬品、特殊ガス類、石英製反応容器等の物品費として使用する。また、2014年10月開催の国際会議(米国:ピッツバーグ)での成果発表のための外国出張経費として使用予定である。
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