研究概要 |
太陽光エネルギーの有効利用は持続可能社会にとって重要なテーマである.アモルファスSi太陽電池はランダム構造に由来する様々な材料上/応用上の利点を有するが,結晶性Siと比較し効率が低い.本研究では多成分系酸化物カラスのナノ結晶化や,前駆体ガラスに内在する不均一性を利用した欠陥導入プロセスなどを駆使し,太陽光発電におけるスペクトル・コンバーターと新概念「タイムシフター」機能を併せ持つ高輝度残光体の創製およびその蓄光特性の解明と向上を目指すものである.以下に得られた主な成果を記す, 1.Ti^<4+>および酸素欠陥を発光中心とする希土類フリー蛍光体.残光(蓄光)体に関し,その発光特性の支配因子を明らかにし,包括的議論を進めた.シリケート系鉱物に由来する結晶相が光物性と資源的観点から,スペクトル・コンバーターとタイムシフター構築にとって有望な材料であることを提示した. 2.可視域に広い発光バンドを有するシリケート系結晶Sr_2TiSi_2O_8に着目し,非化学量論組成の前駆体ガラスから緻密かつ高配向な透明結晶化ガラスを作製し,その結晶化メカニズムを解明した.過剰に存在するSiO_2が単結晶ドメイン中に寄生することで可視域における高い光透過性が達成されることを顕微鏡学的研究により実証した. 3.Ti4+と同じ電子構造を有し,応用上有用な光物性を有するNb^<5+>に着目し,Nb系誘電体相が析出する透明結晶化ガラスの作製を試みた.結晶径約10nmの強誘電性Ba2NaNb5015およびNaNbO_3が共析出する結晶化ガラスの創製に成功し,前駆体ガラスと同等の光透過性を確認した. 4.昇温過程における非弾性光散乱のその場観測を実施し,Nb_2O_5高含有ガラスにおけるNaNbO_3ナノ結晶の発生ダイナミクス解明を行った.ナノ結晶の形成の前駆段階として,準弾性散乱の増強とボソンピークのソフト化が確認されたTEM観察結果と併せて,NaNbO_3相はナノメトリック相分離によるNbリッチ領域の形成によるものと結論付けられた.
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