本研究課題では,太陽電池セルの分光感度を幅広くカバーする発光材料の創出をめざし,異なる発光波長領域を有するナノ結晶をガラス中へ分散させた透明結晶化ガラスの作製を行った.平成26年度において推進した研究で得られた主な成果を記す.また研究成果に関しては学会等で報告を行っており,関連内容のいくつかは学術論文誌へ投稿中である.
1.これまでに,豊富に存在する工業用セラミックス材料であるジルコニア(ZrO2)において,希土類無賦活での長残光現象の発現に成功している(昨年度).これをさらに発展させ,耐久性や作製性に優れたボロシリケート系ガラスからのZrO2結晶化ガラスの創製に成功し,酸素欠陥に基づく発光および残光現象の発現を確認した. 2.マンガンイオン(Mn4+)を発光中心とするテトラジャーマネート相Li2Ge4O9は多結晶シリコンの分光感度に適合する赤色発光を示すが,100℃付近で温度消光が顕著となる.本研究において,上記結晶のLiの一部をNa置換したLiNaGe4O9のナノ結晶を結晶化ガラス法により合成し,色純度の高い赤色発光を示すこと,さらにNa置換が発光の温度特性向上に効果的であることを見出した. 3.結晶化学的見地からベニトアイト構造を有するSrGe4O9相が優れた発光特性を示すことを予見し,この結晶相にMn4+賦活することで,高い内部量子収率と色純度の高い赤色発光を発現することを実証した.さらにGeの一部をSiに置換することで発光の量子収率と消光温度の向上を確認し,特に後者は,現行のMn賦活赤色蛍光体に匹敵する温度特性を有することを見出した.
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