研究実績の概要 |
固相反応法により作製したリン酸三カルシウム (α-TCP)およびSr含有α-TCP粉末0.5 gを超純水もしくは1.0 M Na2CO3 水溶液25 mL中,90℃で72時間静置し,その後,得られた沈殿物を超純水で洗浄してろ過し,105℃で3時間乾燥した。超純水を用いて合成した試料をHAp, 0.1SrHAp, 0.2SrHAp, 0.3SrHApとし,Na2CO3水溶液を用いて合成した試料をCAp, 0.1SrCAp, 0.2SrCAp, 0.3SrCApとした。 ICPによる元素組成分析の結果より,作製したHAp系試料はCa/P比の低いCa欠損型であることが分かった。XRDパターンより,HAp系試料ではHAp (PDF#09-0432) の単相,CAp系試料ではHApとCAp の二つの結晶相が確認された。CAp系試料の炭酸置換量はそれぞれ7.99, 6.84, 7.84及び6.9 wt%であった。 0.3SrHApの二次元1H→31P HETCOR-NMRスペクトルの解析により,1Hの投影スペクトルでは0.2 ppm付近にHAp格子中のOH基,6.1 ppm付近に試料表面の吸着水,9.8 ppm付近にP-OH基に由来するピークが観察された。31P断面スペクトルから,結晶構造中のオルトリン酸イオンに帰属される対称なピークが観測された。一方,試料表面のH2O近傍の31P周囲の局所構造と,P-OH基近傍の31P周囲の局所構造を反映する31P断面スペクトルの形状は互いに類似し,結晶構造中のオルトリン酸イオン由来のピークよりも幅広いことから,試料表面のH2O近傍にP-OHを持つプロトン化したリン酸イオン種であることがわかった。SrHApはSr(II)置換HApをコアとし,その周囲をP-OHを持つ化学種層が覆ったコア-シェル型構造であると考えられる。13C MAS-NMR分光法により,アパタイト結晶構造中のリン酸イオンサイトに炭酸イオンが置換したB-typeアパタイトであることがわかった。 In vitro溶解性試験の結果から,Sr及び炭酸含有量のいずれを調節しても溶解性が変化し,Sr含有量の増加よりも炭酸含有量の増加による溶解性の向上が顕著であった。
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