研究課題/領域番号 |
24360275
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
稲熊 宜之 学習院大学, 理学部, 教授 (00240755)
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研究分担者 |
勝又 哲裕 東海大学, 理学部, 准教授 (90333020)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リチウムナイオベート / 極性 / 高圧合成 / 強誘電性 / 二次ヤーンテラー効果 / 相転移 |
研究概要 |
当研究グループでは、LiNbO3型酸化物が高圧下で安定化できることに着目し、LiNbO3型化合物の高圧合成と物性に関する研究を行ってきた。本研究ではこれまで得た知見を発展させ、(1) 抗電場制御による分極の反転、(2) ペロブスカイト-LiNbO3相境界を利用した高い外場応答性の実現、 (3) マルチフェロイック等の新規機能開拓、 (4) 非線形光学特性の向上を目標とし、新規LiNbO3型化合物の創製と機能開拓に取り組んでいる。本年度は、昨年度に引き続き新規物質を含むさまざまなLN型酸化物、酸化フッ化物、酸化窒化物および関連化合物の高圧合成と高圧での反応および相変化挙動の解析を行い、得られた物質の構造解析と物性測定に取り組んだ。この中で新規LN型酸化物ZnTiO3の高圧合成に成功し、高圧下ではぺロブスカイト相で、減圧時にLN相へ転移することが実験および計算の両面から示唆された。LN型ZnTiO3はZnSnO3と比べるとその酸素八面体歪みが大きく、光第二高調波発生強度(SHG)は24倍であった。大きな歪みとそれに伴う高いSHG強度は、d0電子配置をもつTi4+の空のd軌道と酸素O 2p軌道の相互作用に基づく2次Jahn-Teller(SOJT)効果に起因することがわかった。また、上記(1)の抗電場制御と(2)のペロブスカイト-LiNbO3相境界を意識してCaTiO3-MnTiO3固溶系の合成を行う過程で見出したCaMnTi2O6は、極性空間群P42mcに属するAサイト鎖状秩序型二重ペロブスカイト構造という新規構造をもつこと、また電場による分極反転が観測され、強誘電性をもつことを明らかにした。そして、高温における構造解析、熱測定および誘電測定から、630 Kにおいて秩序無秩序型強誘電相転移が起こることを見出した。得られた結果から、SOJT効果とAサイト秩序が協奏的に作用し分極が生じているという新たな極性発現機構に基づいていることを明らかにした。さらにこの物質は10Kで反強磁性を示し、マルチフェロイック物質であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度に引き続きLiNbO3型化合物の探索合成を行うとともに得られた物質の構造および物性解明に取り組んだ。その結果、新規LiNbO3型酸化物ZnTiO3の合成に成功し、高圧における反応および相変化挙動について考察するとともに得られた物質の結晶構造や極性の発現機構を明らかにした。さらにぺロブスカイト-LiNbO3相境界の探索の過程で得られたCaMnTi2O6がAサイト鎖状秩序型二重ペロブスカイト構造をもつこと、また強誘電性を示すことを確認し、相転移挙動についても明らかにした。以上のことからからおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後もLiNbO3型化合物の探索合成、高圧における反応および相変化挙動の解析を継続し、これまで得られた知見をもとにLiNbO3型化合物における相変化、構造、極性、非線形光学特性等の物性の関係について総括する。また、高圧で得られたLiNbO3型化合物の分極反転の実現、圧電性の評価についても引き続き取り組む。さらに新規Aサイト鎖状秩序型二重ペロブスカイトの探索も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費に関しては全体として購入金額が予定していたよりも安価に抑えられたため差異がが生じた。また、旅費に関して海外での国際学会発表を予定して計上していたが、H25年度は海外での発表を見送ったため差異が生じた。人件費・謝金については、当初予定していたほど仕事量が多くなかったため、差異が生じた。 次年度使用額と合わせた研究費を以下のように使用する予定である。物品に関しては装置購入、消耗品購入に充て、研究を加速する。また、旅費に関しては2014年8月開催のカナダでの国際会議で成果を発表する予定であり、国内旅費の予定額に加算して計上する。人件費に関してはH25年の経験を踏まえて計上する。
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