フィラー添加複合材用マトリックス樹脂として、反応誘起型相分離メカニズム(マイクロメートルサイズの相分離)を有するエポキシ/熱可塑性樹脂ポリマーアロイと、自己組織型相分離メカニズム(数十ナノメートルサイズの相分離)を有するエポキシ/アクリル系トリブロック共重合体(BCP)ポリマーアロイを比較し、マトリックス樹脂中のフィラー存在場所や分散状態に及ぼすフィラー表面処理剤の効果を検証した。 反応誘起型相分離システムをマトリックスとした場合、フィラーの表面処理剤(オレイン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸といった脂肪酸)の有無やアルキル鎖長さの違いにより、エポキシリッチ相から熱可塑性樹脂リッチ相へとフィラー存在場所が変化し、表面処理剤と複数マトリックス成分との親和性の大小がフィラー選択配置のためのキーパラメーターになることがわかった。一方、自己組織型ナノ相分離システムをマトリックスとした場合は、検討範囲内においては脂肪酸のアルキル鎖長さの違いによらず常にエポキシ相にフィラーが選択配置されることがわかった。 SPring-8放射光による小角Ⅹ線回折により、用いたBCP中のソフトセグメント(エラストマー)であるポリnブチルアクリレート成分が、エポキシ樹脂の硬化前段階から既に数十ナノサイズの相構造を形成していることが明らかとなった。また、この相構造は、BCP組成、BCP分子量およびエポキシ樹脂中のBCP添加量により決定されることが知られた。 以上のことから、一定構造周期のナノ相構造を形成する推進力が高いマトリックス樹脂システムを用いた際には、フィラーがエポキシ相に選択配置された分散構造をとることにより、フィラー複合材全体の界面自由エネルギーの最小化が達成されると考えられる。
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